ブラジルサッカー便り 

2014年よりブラジル、サンパウロ在住、サッカー大好きです。

南米王者が至上命題のパルメイラス、ベスト16で早すぎる敗退

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大怪我から復帰のモイゼスの大活躍でトータルスコアで同点に追いつくも、PK戦で敗れた。(divulgação)

 
 「リベルタドーレス杯は俺の強迫観念」 (obsessãoを直訳してしまった。 「リベルタドーレス杯で優勝したくてたまらない」の意味)と歌うパルメイレンセたちが泣いている。 補強に一億レアル以上も費やして、「今年は絶対にリベルタ優勝!クラブワールドカップだって勝てるさ」の意気込みで挑んだ今シーズン、まさかの無冠がほぼ確定してしまった。(半分が終わった全国選手権は4位に付けるも、首位コリンチャンスとの差は勝ち点15)
 
 パルメイラスの今年の迷走ぶりは昨日書いたので、昨日の試合の事に絞って触れよう。 パルメイラスの相手はエクアドルリーグの名門、バルセロナ・デ・グアヤキル。リベルタドーレス杯では準優勝が2回ある。 一カ月前のアウェイのファーストレグで、パルメイラスは後半ロスタイムに失点し0-1で敗れていたので、ホームのセカンドレグでは、突破のためには2点差以上の勝利、1-0ならば、延長なしでPK戦に突入。2-1、3-2、4-3などの点を取られた上での1点差勝利ならアウェイゴールで敗退という条件だった。
 思えばスタメンの配置から違和感があった。右サイドバックには本職の選手ジェアンではなく、本来ボランチのチェチェが入っていた。去年、地味な役回りながら、全国選手権ベストイレブンに推す声もあったほどのジェアンを差し置いて、チェチェを置く意味はなんだろう?と思ったが、最後までこの配置は効果を発揮しなかった。

 また、本来トップ下のベネズエラ代表ゲーラも、体調が万全ではなく、ベンチスタート。1トップの下の2列目にはドリブラータイプが3人も並び、強引な突破を仕掛けては奪われて、逆襲を許していた。それこそ、不慣れなチェチェの右サイドが狙われていた。
 「こういうのを『cadênciaが足りない』と言うんだろうな」と思っていたら、やはり解説者が、「パルメイラスは縦に急ぎすぎ、cadênciaが足りない」と語っていた。cadênciaとはゆったりとゲームに緩急を付けることで、まさにゲーラがやらなくてはいけない事だった。
 低調な前半を0-0で折りすと、パルメイラスは去年優勝の立役者で、2月に負った大怪我から3日前に復帰したばかりのモイゼスをトップ下に投入した。「モイゼス、モイゼスというけれど、5カ月ぶりに戻ってきたばかりの彼に救世主の役割は期待できない」とのコメンテーターの言葉があり、僕も完全に同意だったが、モイゼスはその予想を完全に覆してみせた。後半6分に自陣深くから、右足アウトサイドでのロングパスを前線に通し、ゴール前にダッシュ。パスを受けたサイドアタッカーのドゥドゥからの折り返しを受けると、踊るようなタッチのドリブルでディフェンスを交わして左足でゴール隅に叩き込んだ。
 絶叫する3万8000人のパルメイレンセ。パルメイラスはここから一気に畳み掛けたかったが、DFミナと、MFドゥドゥを負傷で交代させざるを得ず、最後に攻撃の勢いを付けるカードを切れなかったのが痛かった。アウェイゴールの恐怖がちらついたか、トータルスコアで逆転となる2点目をなりふり構わず狙うことも出来ず、試合はそのまま1-0で終了。トータルスコア1-1、アウェイゴールの差もなしで、PK戦に突入した。
 PKは先蹴りをバルセロナにとられ、さらに先に外す展開(暫定的に2点差がつく)ながら、バルセロナの5人目を止めて追いつき、6人目に突入。ただ、ここでも「裏の攻撃」はやはり不利。バルセロナの6人目に決められ、「失敗すると負け」のプレッシャーを受けたパルメイラスの6人目は止められてしまった。
 「これ程の陣容をそろえてもらって、ブラジル杯もリベルタ杯も負けた。そんな監督に、クビの危険性があるか無いかって? あるに決まっている。首脳陣は完全に俺をクビにする権利を持っている。俺は結果にガッカリはしているが自分の全力を尽くした。これ以上できることはなかったと言い切れる。それが及ばなかったということ」と気丈に語るクーカ監督、敗戦直後のパルメイラス会長は「このまま監督もGMも留任でする。来年のリベルタドーレス出場権を確保するところからやり直し」と語るも、ブラジルの監督人事は本当に分からない。「全国選手権4位確保」という、開幕前は誰も考えなかった目標に向けて、パルメイラスは精神的に建て直せるだろうか?