ブラジルサッカー便り 

2014年よりブラジル、サンパウロ在住、サッカー大好きです。

知られざる若手有望監督、真面目一徹、コリンチャンス、ファビオ・カリーリの素顔  「いつか日本で監督をしたい」とも語る

f:id:kimio_ido:20170603071827j:plain

派手さはないが堅実な手腕でコリンチャンスを率いる監督のカリーリ
(Daniel Augusto Jr. / Ag. Corinthians)

 

サンパウロ最大、ブラジル全土でもフラメンゴに次ぐ人気クラブ、コリンチャンス。名将チッチに率いられブラジレイロンを独走で制覇してから2年、去年は財政難からほとんどの主力の放出を余儀なくされたうえに、チッチの代表監督就任後の指揮官人事も迷走。昨年は7位にとどまり、リベルタドーレス杯出場権も失った。そんなチーム再建を託されたのは、若き指揮官ファビオ・カリーリ(43)だ。

ライバルのパルメイラスに比べて派手なビッグネームの乏しい今年のコリンチャンスを、サンパウロ州選手権優勝と、ブラジレイロンでも開幕3戦で2勝1分の2位に押し上げている。 
 
そんな彼の手腕に注目したブラジルのスポーツニュースサイトが、インタビューを試みた。しかしそこで話されているのはサッカーのことではない。
有名選手だったわけでもなく、あまり素顔を知られていないカリーリの知られざる一面を浮き彫りにしている。
 
Qサンパウロでの生活は楽しめていますか?
A(主に助監督をつとめていた)去年まではね。劇場、映画館、レストランにも行っていた。今年はもっぱら、家とトレーニング場の往復だね。
 
Q教育について聞かせてください。あなたはサッカースクールを持っていますね。
Aブラジルの教育は改善の余地が大いにあると思う。私のサッカースクールは、サッカー選手を育てる事が目的じゃない。筋の良い子を見つけて、代理人になって儲けようなんて気もない。2015年の開校以来、子供の人間的成長を助け、親世代のサポートもしたいとの方針をとってきた。
 
Q今の政治について伺います。あなたは現政権を支持しますか?
Aおっと、来たか。(笑)もし今の大統領をおろさなきゃならないとしたら、他にももっと… 駄目だ。これ以上は話せないよ。 もちろんニュースは少しは見ている。何が起こっているかも大体知っている。でも今はコリンチャンスの監督という本当にプレッシャーのかかる仕事に集中したい。それに報道がどこまで本当かも分からない。より良いブラジルを願っているだけだよ。まだこの国はいろんな意味で発展しなくてはいけない。
 
Q先ほど「レストラン」の言葉が出ました。何料理が好きですか?
A ファビオ・カリーリの名前から何を思い浮かべる?私はイタリア系移民出身だから、イタリア料理が好きだ。ラザニアやニョッキが好物だよ。
 
Qお酒は飲みますか?前任者チッチのように、カイピリーニャが好きですか?
Aいいや、酒は全然飲まない。一滴も飲んだ事がない。優勝のお祝いの席だったら、飲むふりくらいはしてもいいけど、やっぱり飲まないよ。
 
Qということは、友人と出かけても、帰りに運転するのはいつもあなたですか?
Aその通り。思い出すよ「遊びに繰り出す?カリーリも一緒?じゃあ帰りは安心だな」って言われたことを。いつも帰りは私が運転していた。
 
Q物凄く真面目だという印象を持たれていますが、ハメを外したことはないのですか?
Aないよ。基本的に考えなしに衝動的に行動することもない。周りで起こっていることもよく見えているし、どうなるかの予想もつく。プロ選手として何百試合も戦ったけど、退場は2回。その内一回は、関係ない乱闘の人違いで退場だった。
 
Qしかしそれでは、今指導している選手がふざけた行為をしても理解するのが難しいのでは?
Aそんなことはない。現役選手として、ブラジル全国1部から、サンパウロ州3部まで経験してきた。ロッカールームの中でも外でも、いろんなことを見てきた。凄い選手が下のディビジョンに埋もれていることもあった。サッカーの世界では小さな事がその後の運命を分ける。←ブラジル人はこうして、時々聞かれたことに答えない(笑)これでも彼は少ないほう。
 
Q本当にバカなことは一回も?
A一回もない。12歳の頃から責任感をもって生きてきた。家の近くの商店でアルバイトをしたこともある。バカなことをしたなんて思い出せない。もし、本当に幼い頃のこと、自分が覚えていないけど、何かバカなことをしたって両親が話すかもしれないけれど。
 
Qサッカーの世界に入る前に別の仕事をしたことはありますか?
Aさっき話した、子供の頃の近所の建設用具店でのアルバイトの他には、職業訓練で、水道の蛇口の修理技術を学んだけれど、結局その仕事に就くことはなかったな。19歳の時に、地元チームに入ってからはサッカー一筋だよ。
 
Qサッカー選手じゃなかったら、水道修理工に?
A多分ね。でも、プロになれなかったとしても何かしらサッカーには関わっていたと思う。子供にサッカーを教えるとかね。
 
Q18歳の娘さんと、7歳の息子さんがいますね
A息子はまだまだ子供だが、娘はもう18歳で、彼氏がいることも知っている。年頃だから当然気になるが、あまり気に病んでもしかたない。でも娘の彼氏は、感じの良い青年で良かった。
 
Q娘さんの彼氏はコリンチャンスファンですか?
AサンパウロFCのファンだよ。今のところ、彼の唯一の欠点だ。でも大したことじゃない。助監督時代から、サンパウロFCに勝っても娘をからかうこともないし。
 
Q最近の若い選手はピアスを付けたり、変わった髪型にしたり、色つき(時には左右別)のスパイクを履いたりしていますが、意見はありますか?
A自分がやろうとは思わない。悩まずに洋服棚から最初に手に取った服を着る。自分はそういうことに気を使っている暇はないが、だからといって、選手のプライベートの服装に口出ししようとも思わない。ピッチでは厳しく選手に要求するけどね。
Q最近何か贅沢をしましたか?車とか、旅行とか
A特にない。良い車や、良い服、良い靴を手に入れたい気持ちはわかるよ。でも自分の生活は質素だと思う。
Qでは、「こんなことにお金を使いたい」なんてこともないのですか?
Aあるよ!ビーチは好きだ。ビーチ沿いに別荘が欲しい。休暇をそこで過ごせたら良いと思う。
Qこれまでに旅行した中で一番の場所は? 誰に対してもお勧めできるようなところは?
A人生一番の旅は、休暇で行ったんじゃないんだ。でも最高だった。前からいろんな人が勧めてはいたけれど、行ってみたら凄く良かった。2012年の12月に15日間、コリンチャンスの助監督としてそこに滞在した。日本さ。できれば1年くらい日本で監督をしてみたい。あそこは教育レベルも高く、文化も興味深く、すごく清潔だし、何でもちゃんと機能する。
日本について2日目のことだよ。時差ボケで朝の5時に目が覚めた。ちょっとホテルの周りを散歩しようとしたら、ホテルの前の大通りで、車も何も通っていないのに、凄く寒かったのに、50歳くらいの女性が、ちゃんと信号待ちしていたのには驚いた。この国はどうなっているんだと思った。街にゴミ一つ落ちてないし、まったく。

インタビューから一部を抜粋してお届けした。「戦力的に乏しいコリンチャンスが、ここまで良い位置につけているのはカリーリの手腕だ」との評判も高い。 すぐの日本行きは難しいかもしれないが、監督交代の激しいブラジル、しかもまだ43歳と働き盛り。真面目な人柄は日本でも良い仕事をするのではないかと思わされる。