ブラジルサッカーTV事情
ブラジル(サンパウロ)の日常はサッカー番組だらけだ。
基本的に水曜夜と、日曜昼は必ずグローボで、国内リーグの試合の中継がある。
それに加えて、平日は毎日お昼のニュースで30分のスポーツコーナー、他局では2時間のサッカートーク番組、週末夜も、その週の試合のハイライトをいくつものTV局が延々と流している。
毎日、「今日のサンパウロFCの、パルメイラスの、コリンチャンスの、サントスFCの練習はどうでしたこうでした、会見で監督は何をしゃべりました~」とやっている。
ここまでは地上波無料放送の話で、有料チャンネルも合わせると、延々と試合中継か、周辺情報を伝える番組を流し、コメンテーターが喧々諤々やっている。
今週末からはコンフェデ杯も放送するし、チャンピオンズリーグも、この前のU20ワールドカップも一部地上波でカバーしていた。
日本との一番大きな違いはトーク番組の出演者も、サッカー中継のコメンテーターも、恐れず自分の意見を言い切ることだ。審判のミスもはっきり指摘するし、番組の中で意見の食い違いも気にしない。
「俺はそうは思わないね」「誰々のプレーは、誰それより、1000倍マシ」「あの選手は大金払って獲ったのに全く活躍していない」「もう開幕して4カ月経ってるのに監督はチームの形を見つけられていない」聞いてるこっちがヒヤヒヤするほどだ。
有名な話なので知ってる人も多いと思うが、ブラジルの試合中継ではピッチリポーターが前後半の合間にも選手を捕まえて、コメントを取ろうとする。活躍した選手には聞きやすいかもしれないが、ミスをした選手、勝つべき試合だったのに引き分けてしまった直後のチームの中心選手にもお構いなしにマイクを突きつける。
レポーター「コリンチャンスは今日は期待以下の結果に終わってしまいましたが…」
選手「(期待以下って)何が期待されていたって?」
レポーター「勝つことです」選手「アウェイでの試合は簡単じゃない、それに毎試合勝つなんてできるわけない~」
レポーター「あなたは自分が誰に引っ張られて倒されたか見えていたんですか?」
選手「いいや」
レポーター「じゃあどうして、XX選手を指さしたんですか?」(XX選手は人違いのイエローが2枚目となり退場)
選手「うるせえ!xxxxxxxx-カ!」
審判の判定に対する解説も、元審判が担当し、良い判定、悪い判定にはしっかりコメントする。「ビミョーでしたねえ」も、「PKだ!PKだ!」の松木節もない。
余計なタブーが限りなく少ない(決してゼロではない)からこそ、見る側の目も養われ、見られる側(選手や審判、時には解説者自身)の緊張感も増すのだろう。
ブラジル人全てがサッカー通だとは思わない。ワールドカップ開催中でも、代表選手の顔と名前が一致しない、スタメンをそらで言えない、なんてことはよくあることで、日本のスカパーでやっていたような分析番組の方が詳しい時もある。
ただ、「それほどマニアというわけではないけれど…」的な層はものすごく厚くて、サッカーに一家言持っている人はすごく多く、それがこの国のサッカーにかかわる人々を常に緊張させているのだろう。