ブラジルサッカー便り 

2014年よりブラジル、サンパウロ在住、サッカー大好きです。

90年代サッカー回顧特集

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ブラジルの老舗サッカー月刊誌、プラカール6月号は、「90年代サッカー回顧特集」だった。1978年に生まれ、1990年イタリアワールドカップからサッカーに興味を持ち、92年ナビスコ杯、93年Jリーグ開幕、ドーハの悲劇、97年ジョホールバルの歓喜、98年フランスワールドカップ日本初出場と思春期を過ごしてきた筆者のためのような企画だ。

思えば、サッカーの歴史を振り返る時はいつも「80年代は素晴らしかったが、90年はイマイチ」という台詞が決まり文句だった。

82年スペインワールドカップでの、ブラジル黄金の中盤や、それを倒したイタリアのパオロ・ロッシ、延長3対3の死闘となった、西ドイツxフランス戦。86年メキシコ大会のプラティニとジーコの死闘ブラジルxフランス戦、アルゼンチンxイングランド戦でのマラドーナの5人抜き、神の手などの印象が強く、引き分けだらけで、決勝も微妙なPKの判定で決まった90年イタリア大会、94年アメリカ大会も、総ゴール数こそ増えたが、印象的な試合に乏しく、決勝戦も0‐0PK戦決着だった。98年フランス大会は、直前2大会よりはマシだったが…

果たして、ブラジルサッカー雑誌が企画する「90年代回顧特集」も、94年ブラジル4度目の世界制覇のことにはそれほどページが割かれていない。

もちろん、ドゥンガがワールドカップトロフィーを掲げる姿は大きく載っているが、隣には同じ大きさの、F1ドライバーアイルトン・セナの写真が。

「90年代はイタリア大会での屈辱的な敗戦(決勝トーナメント一回戦でアルゼンチンに0-1で負けて敗退だった)で幕を開けたが、アイルトン・セナが我々の傷をいやしてくれた。94年、ブラジルはその歴史上最大の悲しみを味わった。セナの死だ。直後のアメリカ大会で、ブラジルは、主将ドゥンガの統率と、エースストライカー、ロマーリオの活躍もあり、24年ぶりのワールドカップ優勝を果たし、セナへの供養とした」とある。

 

セナの偉大さが分かると同時に、94年大会はせっかく優勝したのにワールドカップの戦いそのものにはあまり深く触れられていない。ブラジル国民にとっても、同大会のブラジルは、4-4-2の「4」の中盤がみんな守備的で、2トップロマーリオ、ベベット頼みで優勝したことにあまり納得がいってないようだ。

その他この特集で触れられているのは、ロナウドやリヴァウド、ライ―、エジムンド、ロベルト・カルロス、タファレル、ジャルデウ、カフー、レオナルド、ルイザォン、デニウソン、アレックス、90年代終盤のロナウジーニョ・ガウーショの鮮烈なデビューももちろん触れられている。

監督のコーナーでは、92年、93年、サンパウロFCを率いてリベルタドーレスを連覇、トヨタカップ(インターコンティネンタルカップ)でも92年にバルセロナ、93年にACミランを破って2年連続世界一になったテレ・サンターナの他、ザガロ、パレイラ、ルフシェンブルゴ、フェリパォンも扱われている。

ブラジルはリベルタドーレス杯を特に重視し、その後のヨーロッパ王者とのトヨタカップにも並々ならぬ気合で臨んでいた。(というか、南米勢はいつもそうだ)

ヨーロッパクラブと資本力の差で負け、ブラジル人のスターを買い漁られ、ヨーロッパクラブが、外国人枠も撤廃したことで近年はクラブワールドカップでもほとんど勝負にならないが、まだ南米勢が対抗できていたのが90年代だった。

ブラジルの力を見せつけた、その象徴である92、93年サンパウロFCのトヨタカップ連覇は、相当大きな意味を持っているのだろう。

今回の特集は、90年代が、今のようにテレビで世界中の試合が見切れないほど放送され始めるはしりとなった時代だったと語って締めくくられている。

実際、今日のお昼にもコンフェデ杯開幕戦のロシアxニュージーランド戦が地上波で放送されていた。今は2017年、「1996年の誰々の~」なんて記事を読むと、つい最近の事のように思えるが、もう20年も前の事かと改めて知り、ため息がでた。

さて、プラカールは、2000年代特集はやらないだろうか?まだ歴史の積み重ねがないからやらないかな? その時のブラジル国内サッカー事情にはあまり詳しくないのでやってもらいたいけれど…