ブラジル国内チームを悩ます言葉「ジャネーラ」(移籍ウィンドウ)
20歳でコリンチャンスの左サイドバックのレギュラーを掴んだギリェルミ・アラーナ
(© Daniel Augusto Jr. / Ag. Corinthians)
リオ五輪金メダルメンバーのFW、グレミオの24歳ルアン
今ブラジルで一番「乗ってる」選手の一人 (LUCAS UEBEL/GRÊMIO FBPA)
6月20日、サッカーブラジル全国選手権1部リーグが第8節まで終了した。ここまでの順位は、1位コリンチャンス、2位グレミオ、3位クリチーバとなっている。
開幕前に上位争いが有力視されていた、パルメイラス、アトレチコ・ミネイロ、フラメンゴの調子が上がらず、ファンをヤキモキさせているが、まだリーグ戦は始まったばかり、それほど悲観することもない。
上位から下位まで、今各チームを悩ませている共通の言葉がある。それは、「ジャネーラ」だ。これは「窓」という意味で、国際移籍期間を示している。(「移籍ウィンドウ」って日本のサッカー雑誌でもよくいいますよね)
通常、欧州有力国のサッカーシーズンは、8月半ばに開幕し翌年5月末に終了する。シーズン開幕直後の補強のために8月いっぱいが国際移籍期間に設定されている。
〃サッカー王国ブラジル〃のブランド価値は今でも高く、ブラジル国内で多少目立つ活躍をすると、代表クラスでなくとも、すぐ欧州のクラブに引き抜かれてしまう事が、ブラジル国内のチームにとっては、編成上大きな障害になっている。
ブラジル国内のサッカーシーズンは2月から12月までだ。「シーズン半ばの8月に主力を引き抜かれたら、別のチームになってしまう」とはブラジルサッカー界全体の悩みだが、ブラジルよりレベルの高いリーグでのプレーを夢見て、もちろんより高い報酬にひかれ、シーズン途中で移籍する例は後を絶たない。最近では欧州以外にも、中東や中国のクラブも高額なサラリーで有力ブラジル人選手をどんどん引き抜いている。
「移籍期間は8月」と言っても、欧州のチームは、ブラジルで2月からシーズンを始めている選手を8月に獲ると、その選手は、まとまった休みが翌年の5月までなくなり、疲労や怪我の心配があるので、6月前後から選手を拘束し、自分達のスケジュールの「6月休み、7月キャンプ、8月開幕」に選手を合わせさせてしまう。
その典型的な例が、サンパウロFCからフランスリーグに移籍が決まった、ルイス・アラウージョ(21)だ。同選手は、昨年11月にデビューしたばかりで、今年レギュラーを掴むも、主にプレーしたのは、サンパウロ州選手権のみで、全国選手権は開幕から一カ月も経たない内に6月4日の試合を最後にフランスへ旅立ってしまった。
首位のコリンチャンスはサイドバックのアラーナにボランチのマイコン、2位のグレミオはフォワードのルアンと、若手有望株の欧州移籍の噂は常に流れており、監督は「せめてこのタイミングでは行かないように首脳陣も交渉してくれている」などと苦しい胸の内を語っている。
各チームにとって毎年の悩みの種、6~8月の〃フィールド外の戦い〃は始まったばかりだ。