ブラジルサッカー便り 

2014年よりブラジル、サンパウロ在住、サッカー大好きです。

ブラジルサッカー界の俗語、「パラグアイの馬」とは?

ポルトガル語のサッカースラング、cavalo paraguaio(パラグアイの馬)について解説します。
 

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パラグアイ代表のFWアンヘル・ロメロ( © Daniel Augusto Jr. / Ag. Corinthians)

 
開幕10試合で8勝2分という驚異的なペースで勝ち続けるコリンチャンスは、果たして「パラグアイの馬」に過ぎないのか?などとサッカー番組などで語られている。 気になって調べたら、リーグ戦などで、開幕当初こそ予想に反して好調なものの、その後調子を落とし他チームに逆転されるチームのことを指す言葉だった。ちなみにこれは、試合開始直後こそ好調だが、後半動きが落ちて逆転されるチームや、交代させられる選手の事をさしてもいる。
 
語源はこうだ。1933年8月6日、リオでブラジル初の競馬のグランプリレースが行われた際、ペルナンブーコ州産で、パラグアイ血統の馬、モッソロ号が、大方の予想を裏切り優勝してしまったのだ。

レースでは勝っているのに、どうして最終的には順位を落とすチームをさす言葉になったのだろうと思ったが、この言葉には周りの「どうせこの勢いも続かないさ」というやっかみの感情が込められている事が分かった。
 
「なんでパラグアイ血統の馬が初のブラジルグランプリレースに勝つんだ」という感情が、「なんであんなチームが…」という感情と結びつくのだ。
 
さて、コリンチャンスは開幕ダッシュに成功して、「どうしてコリンチャンスなんかが…」と言われなければならないチームなのだろうか?率直に言ってそうだ。
開幕前のマスコミの予想で、今でも覚えているフレーズがある。「パルメイラスvs残り19チーム」だ。昨年独走で優勝し、戦力補強もバッチリ、個人的事情で退任したが、パルメイラス関係者のみんなが復帰を望んでいたクーカ監督も復帰と、今年も独走で優勝するのではないかと思われていた。 それに続くのが、サントスFC、フラメンゴ、アトレチコ・ミネイロで、昨年リベルタドーレス出場権獲得も逃したコリンチャンスは、せいぜい中位といった予想だった。
 
第5~6節の時点で、コリンチャンスがいくら走っていても、解説者たちのコメントは「本当にコリンチャンスを優勝候補と言っても良いんでしょうか?」というものだった。2位のグレミオがぴたりと勝ち点差1で追いかけており、「試合内容ではグレミオのほうが上」という評判だったのだが、そのグレミオを第10節に敵地で破った後は「コリンチャンスを優勝候補と言っても良いのか?」という声は少なくなった。 
 
さらにはコリンチャンスの優勝を快く思わない〃アンチ〃の存在も、「どうせ逆転されるさ」と反感を買い、「パラグアイの馬」と呼ばれる理由の一つだ。「コリンチャンスは素晴らしいチームだから、嫉妬されている、目の敵にされている」と、コリンチアーノの友達からはよく聞くが、他チームのファンに言われた事がないので、客観的な検証ができなかった。
では筆者はどう思っているかと言えば、
「まだまだツキもある。有名選手が少ない? 試合内容も決して圧倒しているわけではない?その通り、このまま謙虚に戦って勝ち点を積み重ねて、いけばひょっとするかもしれない」が本音だ。
 パラグアイの馬で大いに結構。実際、コリンチャンスには、ロメロにバルブエナと、パラグアイ人選手が2人もいる。彼らの活躍で本当に優勝できて、「やっぱりパラグアイの馬だったね」と自分で言ってみたいものだ。