ブラジルサッカー便り 

2014年よりブラジル、サンパウロ在住、サッカー大好きです。

ブラジレイロン第11節 コリンチャンス、リベルタドーレスを睨み一部の主力を温存のボタフォゴに1‐0で競り勝つ

f:id:kimio_ido:20170703081526j:plain

後半途中に入って早々に大きな仕事をした、19歳のペドリーニョ

(© Daniel Augusto Jr. / Ag. Corinthians)

 

 7月2日、冬のサンパウロ、アレーナ・コリンチャンスで、ブラジル全国選手権第11節コリンチャンス対ボタフォゴを観戦してきた。
 
 コリンチャンスは4日前の6月28日にコロンビアでの過酷なアウェイ戦、スダメリカーナ杯を戦い翌29日夜にサンパウロに着いたばかりだった。片やボタフォゴも6月29日にアトレチコ・ミネイロとのブラジル杯を戦っていた。
 
 直前の試合からのインターバルが1日長いのはコリンチャンス、過酷な移動がないボタフォゴと条件的には互角に見えるが、ボタフォゴは今日から4日後の6日にウルグアイの古豪ナシオナルとのリベルタドーレス杯16強戦アウェイを控えているため、ロジェル、ピンパオンら、元Jリーグの2トップを含む3人のスタメンを温存して試合に臨んでいた。
 
 試合は前半から、レギュラークラスではロメロ1人を欠くのみのコリンチャンスがほとんどボールを支配する展開となった。出場停止のロメロに代わって左の2列目で出場したクレイソンが、積極的に仕掛けるもボタフォゴは粘り強く守り、コリンチャンスに決定機を許さない。
 プレッシング開始の位置を、センターラインよりやや自陣よりと深く設定したボタフォゴは、ボール支配をあきらめ、引き分け狙い、もしくはカウンターからの攻撃に望みを託していた。
 コリンチャンスはボール支配率こそ圧倒するも、パスは主にいつまでもヨコ、ヨコ、ヨコでクレイソンの仕掛け意外にはあまり大きなチャンスもなかった。ボタフォゴも、敵の攻めをしのぎ、ボールを奪ってからの速攻を狙おうにも、国内組のみで編成されたブラジル代表にも選ばれた経験のある、エースのMFカミーロが不出来で、カウンターに全く迫力を欠いた。
 コリンチャンスは後半、大胆に動いた。ハーフタイムから、4-2-3-1のダブルボランチの一人、しかもボランチコンビの中ではむしろボール奪取担当の選手、ガブリエルを下げ、右ウイングの選手、マルキーニョス・ガブリエルを投入し、システムを4-1-4-1に組み替えたのだ。普通4-2-3-1のボランチを1人削って、攻撃系の選手を入れるとき、アンカーとしてフィールドに残すのは守備型ボランチの方だ。コリンチャンスのカリーリの選択はそうではなかった。ボールを奪う選手を下げ、ボールをさばく選手を1枚ボランチに残し、攻め駒を増やす、しかも後半開始から。
 
 「ずいぶん思い切ったことするなあ」と思ったら、これが功を奏し、後半はコリンチャンスがさらに圧倒的に攻め込んだ。ボタフォゴディフェンスはその圧力にたまらず後半7分にPKを献上するも、コリンチャンスFWジョのキックを、GKガティートが止めた。実はこのPKの判定はミスで、ファールの起こった場所はペナルティエリアの外だった。「ミスジャッジのPKは案外入らない」そんなサッカー格言は存在しないが、サポートチームでの経験からそう感じている人は多いはずだ。
 
 コリンチャンスの攻勢は止まらず、ボール支配率は65%になり、試合はほとんどボタフォゴ陣内で展開するも中々1点を奪えずにいると、33分にカリーリは今年育成チームからトップに昇格した19歳のペドリーニョをクレイソンに替えて投入。この交代策がズバリ的中した。ペナルティエリア外から、シャペウ(浮き球で敵の頭上を抜くドリブル)を決め、ペナルティエリア内に侵入、折り返しを、ジョのシュート、GKストップ、こぼれをロドリギーニョ、さらにGKストップ、最後はジョが押し込んで待望の先制点となった。
 
 この後、ボタフォゴはロジェル、ピンポンと元JリーグのレギュラーFWを投入し反撃を図るも、すかさずカリーリ監督は、4-1-4-1のダブル司令塔の一角をボランチに替えて4-2-3-1に戻した。人間の心理とは不思議なもので、ずっと押し込んでいたのに、先制したことで逆にコリンチャンスがその後守勢に回る時間もあったが、ボタフォゴは効果的な攻撃を行えず、後半は結局シュートゼロで、コリンチャンスの1-0逃げ切りとなった。
 コリンチャンスはこれで開幕から9勝2分と唯一のブラジル全国選手権無敗となり首位を堅持、昨日パルメイラスに負けた2位グレミオとの勝ち点差は7となった。全国選手権開幕前の、サンパウロ州選手権から続く無敗記録も25試合に伸ばした。
 ボタフォゴは、ある程度こうなることを織り込み済みのプランだったはず、引き分けの勝ち点1を持ち帰れなかったことは無念だろうが、逆にこの試合を犠牲にしてまで挑む6日のナシオナル戦ではゴールを奪っての引き分け以上が欲しいところだ。