ブラジルサッカー便り 

2014年よりブラジル、サンパウロ在住、サッカー大好きです。

11の街 アクセル・トーレス著 

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 スペイン人の有名サッカージャーナリスト、アクセル・トーレスさんの 11Ciudades(邦題「11の街」)のポルトガル語版11Cidadesを読んだ。

 トーレスさんは1983年3月、バルセロナ生まれのサッカージャーナリストで、テレビコメンテーターとしても活躍している。

 バルセロナ生まれの彼の宿命として、FCバルセロナのファンだと思われてしまうのだが、本人は頑なに「自分の心のチームはC.E.サバデイ(Sabadellは現地のカタルーニャ語読みだとサバデイ、サバデルと表記されることも多い)だけ」と主張している。バルセロナから北に30キロの街サバデイに本拠を置くC.E.サバデイは、100年以上の歴史のほとんどを2部以下のディビジョンで過ごしている。

 「11の街」の名の通り、本書は街の名前がついた11の章に分かれており、それぞれにトーレスさんのサッカーをめぐる旅の思い出がつづられている。

 11の街はサバデイ、ロンドン、セビーリャ、リスボン、メドヴォデ(スロヴェニア)ミュンヘン、スウォンジー、ウィーン、アスンシオン、東京、エイバルの各都市で、どこから読んでも楽しめる。

 サッカーを好きになって、世界の国々、都市、言語、文化に触れるきっかけができた。サッカーを好きになって、世界中の、サッカーが好きでたまらない、あるチームが好きでたまらない、それ故に常識外れの行動に出てしまうな人々と知り合うことが出来た。そうした出会いこそが人生の楽しみと常々感じている僕にとって、「そうそう、わかる、わかる」とうなずく文章がそこかしこにちりばめられていた。

 「決勝戦はただの試合じゃない」とは言われていた、それは分かっているつもりだった。でも2003年セビーリャでのポルトxセルティックのUEFAカップを体験してのトーレスさんの言葉は「決勝戦は戦うだけじゃない。決勝戦を生きるんだ」だった。

 20代前半にロンドンでのハイバリースタジアムでのアーセナル戦「ダフ屋のチケットはめちゃくちゃ高かったが、これを見なきゃ絶対後悔する」など、似たような経験のある僕はとても楽しく読めた。

 こういうサッカー賛歌、サポーター賛歌的な本は他にもあるけれど、副作用はサッカー三昧な自分の生活を、「これでいいんだ」と開き直り的に肯定してしまうこと。

 読むときは注意が必要だ。