ブラジルサッカー便り 

2014年よりブラジル、サンパウロ在住、サッカー大好きです。

悪童フェリペ・メロ 監督への悪態が流出し、パルメイラス追放

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2月のコリンチャンス戦でのフェリペ・メロ(右)(Daniel Augusto Jr. / Ag. Corinthians)

   それは今年1月半ばのことだった。 33歳の気性の激しい元ブラジル代表ボランチ、フェリペ・メロを、2016年にブラジル全国選手権を制したパルメイラスが、今年のリベルタドーレス杯優勝のための重要なピースとして獲得した。フェリペ・メロと言えば真っ先に思い浮かぶのが、2010年南アフリカワールドカップ、準々決勝ブラジルxオランダ戦での退場のシーンだ。 激しくボールを奪い合ったメロが映像で見る限り故意にとしか思えない勢いでロッベンを踏み付け、日本の西村主審がレッドカードを出したシーンを覚えている人も多いだろう。

 2015年末インテル所属時代にラツィオ戦での「かかと落とし」退場のエピソードからも彼も荒い気性は知られていたが、パルメイラス入団会見で、いきなりフェリペ節は炸裂した。 「俺はこれまで言いたい事をいい、やりたいようにやってきた」「この瞬間からチームのために全力を尽くす。ライバルチームはどこであろうとぶっ飛ばす」「(ブラジルに対抗心を燃やす)南米の選手(実際は「ウルグアイ人」と言った)をピッチの上でブン殴らなきゃいけない状況になったら迷わずやる」「あんたらジャーナリストは、主に選手の悪口を言って金を稼いでいる」などと予定調和の台詞は一切なく、スタジオのコメンテーターも笑い声を上げるほどだった。

 すぐにチームのレギュラーとなったフェリペ・メロは、開幕戦で、相手選手と激しくボールを奪い合い、相手に文句を言われるも、「なんだコラ、やんのか?」とばかりに睨みつけ、その後同じ選手との接触プレーで激しくぶつかりボールを奪うと、「どうだ!」とばかりに威嚇のポーズをとった。 僕はこういう選手は嫌いじゃない。味方にしても頼もしいと思うだろうし、敵だとしたら、彼が挑発し、その上で負かしてほえ面かかせるのが好きだ。 

 また、リベルタドーレス杯の中継を見ていても、フェリペ・メロが敵と激しくボールを奪い合い交錯、共にピッチに倒れ、にらみ合うとニヤッと笑って握手の手を差し出す姿に、実は偽悪者なだけで、いい奴なんじゃないかとの印象を僕は持っていた。
 しかしパルメイラスが全国選手権開幕前に監督を解任し、家庭の事情で職を離れていた昨年の優勝監督クーカを呼び戻すと、彼の地位は一変した。 ベンチを温める機会が増え、ストレスを溜めると、遂に監督と衝突。 「あいつは嘘つきの卑怯者、性格も陰険」と酔ってジャーナリストに語った言葉がネットに流出すると、パルメイラス首脳陣も、フェリペ・メロの離脱を決めた。
 チームディレクターは会見で、「これまでだって、舞台裏では記者の皆さんにお見せできないこともいっぱい起こってきた。プライドを持った男達が30人以上もあつまっているんだからこれは当然のこと、しかし(監督への悪態の録音流出は)あってはならないこと。彼は一線を越えてしまった」と語り、今後フェリペ・メロはパルメイラスでプレーすることも、チームメイトと練習することもないとした。
 フェリペ・メロとの契約は2019年末まで残っており、それまでパルメイラスは、他チームに移籍させない限り、フェリペ・メロが一切プレーしなくても、給料を払い続けなくてはいけない。その額2443万レアル(8億円以上)で、「高くついたフェリペ・メロとクーカの喧嘩」と、今日の地元紙は報じた。
 チームディレクターは「だからといって、他のチームに格安で売り払う気はない。それなりの条件を提示し、パルメイラスにも、フェリペ・メロ本人にも納得の行くオファーじゃないと、移籍させない」と語ってはいるが、今回の騒動で、すっかり問題児の印象が強まったフェリペ・メロ、そして、「移籍金安くても手放さないと、給料の払い損だよ」と他のチームに足元見られるのは確実。当の本人はどうだろう?移籍を拒否して給料を貰い続けるか? 給料が下がっても他のチームに行くか? 半年もプレーしないと、選手としての価値も大きく下がるし、本当に高くついた酔った勢いの代償だった。