ブラジルサッカー便り 

2014年よりブラジル、サンパウロ在住、サッカー大好きです。

元セレッソ大阪監督、レヴィー・クルピの素顔

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64歳、ブラジルでもまだまだバリバリのレヴィー・クルピ(写真は昨年9月、フルミネンセを指揮していた時のもの)

 
 サッカートーク番組を見ていたら、元セレッソ大阪監督で、今はサントスFCを率いるレヴィー・クルピがゲストだった。切れ者の男性アナウンサーとゲストとの1対1のトーク番組は、画面アップのアナウンサーがまずクルピの経歴を紹介するのだが、その言葉にビックリしてしまった。選手としての経歴や、監督としての経歴、日本のことにひとしきり触れたあと、こう締めくくったのだ。「そして何より、セックスマシーン!!今日のゲストはサントスFC監督、レヴィー・クルピさんです!」画面が少しずつヒキの映像になっていき、クルピが登場した。全く動じず、にこやかに笑っている。 
 
アナウンサーが「Eu exagerei?」 (大げさだったかな?)と尋ねると
クルピは「Não não,você economizou」 (いいや、控えめなくらいだよ)と答えた。
 
 クルピは番組の間中ずっと、ジョークも混じえて、軽妙なやり取りを続けた。 アナウンサーが彼を「歯に衣着せず、いつも率直な男」というように、「本当は歌手になりたかった」とか「ツイていただけの愚か者」という自伝を出した事、「14歳で地元チームのユースに入ってここまで50年、好きな事をしてきただけ。つまり俺は労働した事がない」など、笑ってしまうようなエピソード満載だった。
 話は次第に日本時代に移り、「日本では『すみません』『ごめんなさい』『ありがとうございます』の言葉をすぐ覚えた。みんながしょっちゅう使うから。それがブラジルじゃどうだ?特にサッカーの世界にいてみろ『XXXX』とか『XXXXX』とか『XXXXX』とかとんでもない言葉ばかり。ある時、セレッソが酷いミスジャッジで負けて、ファンが大勢で何か審判に叫んでいる、通訳になんて言ってるのか聞いたら『審判下手クソ』だってさ」
 〃通訳になんて言ってるのか聞いたら「審判下手クソ」だってさ〃は、伝わりにくいかもしれないが、ブラジル人同士ではここは話のオチだ。ブラジルでは審判が酷いジャッジ(というか味方に不利な判定)をしたときは、老いも若きも男も女も「おい審判、ケツ掘られろ!」の大合唱だ。 「審判下手クソ」は、彼らにしてみればなんと礼儀正しい罵声ということになる。 

 もちろんアナウンサーもそのエピソードを聞いて笑っていた。 「まるで違う星の人々だねえ」とも言っていた。誤解しないでいただきたいが、彼らはこのネタで日本を馬鹿にしているのではなく、ブラジルへの自虐とともに、尊敬してくれている。
 日本で通訳を介して知るブラジル人のキャラは彼らが普通にブラジルでブラジル人とポルトガル語で話している時とはまるで違う。もっとずっと真面目な人だと思ったら、ずっと人懐っこく、ユーモア好きで、時に少しアグレッシブに見える。もちろん彼らが日本で本性を隠しているのではなく、通訳を介したコミュニケーションの問題と、あとは質問者の聞き方、聞く内容が堅苦しすぎるのだ。(もちろんブラジル人はそのことも、「とても敬意をもって扱ってくれる」と好意的に言ってくれる)
 
 日本ではどこのチームにもブラジル人選手や監督がいて、ポルトガル語の通訳もいる。 ポルトガル語で試合中に簡単な指示を出せる選手もいると思うが、そこからもう一歩、彼らと冗談を言って笑えるくらいまで勉強したら、自分も楽しいし、ブラジル人選手がチームに馴染む助けになる。ポルトガルやブラジル、または言葉の似ているスペイン語圏への移籍の助けにもなるかもしれないし、勉強して損はないと思う。
 今は僕の応援するコリンチャンスのライバルチーム、サントスFCの監督だが、「おじいちゃん頑張れ!」と応援していきたい。