ブラジルサッカー便り 

2014年よりブラジル、サンパウロ在住、サッカー大好きです。

名門ボタフォゴ躍進を支える38歳の監督は、チームのレジェンド、ジャイルジーニョの息子

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若干38歳でリオの名門ボタフォゴを率いる、ジャイール・ヴェントゥーラ監督

(Reprodução)

 

 今夜はブラジル杯の準決勝ファーストレグが行われる。 組み合わせはボタフォゴxフラメンゴのリオ対決と、名将マノ・メネゼスが率いる、ミナス・ジェライス州の名門クルゼイロと、昨年のブラジル杯王者グレミオの対戦だ。
 2014年に全国選手権2部に降格し、15年の1年を2部で戦い、1部復帰直後の昨年も堂々5位に入ったボタフォゴを率いる若き指揮官はジャイール・ヴェントゥーラ(38・なんと僕より若い!)、ボタフォゴとブラジル代表で伝説的存在だったジャイルジーニョの息子だ。
 決して潤沢な補強予算がない中、ブラジル杯では4強、リベルタ杯でも8強入りを果たし、過密日程の中でも全国選手権では8位キープのボタフォゴ躍進の秘密を探るべく行われた、ブラジルマスコミによるロングインタビューを紹介したい。

Qボタフォゴは大躍進だが、さて、これからどこまで勝ち進める?
Aあまり先の事は考えすぎないようにしている。チームが全力を尽くす事は約束できるが、勝利やタイトルは約束できない。今シーズンから正式にボタフォゴの監督に就任したときからそうしてここまでやってきた。
 
Q「結果結果を急かさないで」というならば、貴方の仕事の成果はどう測ればよい?
Aさあね、(クビにならなければ)今年の最後にでも振り返ってもらえれば。
 
Qブラジル杯準決勝の相手フラメンゴは、パルメイラスとならんで今年最も補強にお金を使ったチーム。ボタフォゴも結束した良いチームだが、フラメンゴのメンバーよりちやほやされることはない。 結局サッカーはお金?
Aお金はいかなる時もいかなる局面でも助けになる。私が300万レアルの資金でレストランを開いたとして、貴方が1600万レアルだったとして、成功する確率が高いのは後者、基本的にサッカーでもそれは変わりない。でもサッカーの神様は時に気まぐれで、試合が始まってしまえば、選手の移籍金や給料の大小では勝負は決まらない。
 
Q勝利への執着心、ファイティングスピリットが大事?
A私は常に選手たちにこう言っている。「俺たちより勝利に飢えたチームは、闘争心に溢れたチームはない」とね。世界的にも名の知れた、有名選手であっても、チームワークを大事にすれば、互角に戦うことは出来る。ボタフォゴがここまで勝ち残っている理由はそこだよ。
 
Q選手たちは貴方を信頼しきっているように見えます
A私は難しい性格じゃない。いつも本当のことしか言わない。試合は最終的には選手がするもの。彼らが、私のプランを、彼らなりの最良のやり方で、ピッチの上で表現する。私が凄いゲームプランを考え付いても、選手がそれを信じてくれなければなんにもならない。
 
Qあなたがボタフォゴのレジェンド、ジャイルジーニョの息子である事で、ボタフォゴを率いて優勝する事は、他のチームで優勝するより価値がある?
Aチームが変わっても優勝の重みに変わりはない。ただ私は育成チームの監督から、トップチームのコーチまで、ここまで9年間ボタフォゴで過ごしていてボタフォゴへの愛着は非常に大きい。ここでタイトルを獲れるという事は非常に重要なこと。でも、目の前の一試合一試合を大切に戦うことしかできない。ここで優勝の事をあまり語りすぎるのは私の主義じゃない。一戦一戦戦うことでは、タイトルにはたどり着けないなんて誰にも断言できない。
 
Qあなたは監督としては若い、年齢はチームを率いるのに重要?
A全く重要ではない。逆に若いことで、選手たちが直面している現実を理解し易いという利点さえある。
 
Qあなたは選手たちと考え方が近い、しかし監督である以上、選手たちと同じようには振舞えないのでは?
Aもちろんそうだ。私は監督になるまでに12年間の準備をしてきた。
 
Qそれはどんな?
A勉強したんだよ。育成チームの監督や助監督をしてね。チームマネージメントや心理学、コーチング、外国語などの座学もやった。英語とフランス語も話すよ。私はこれまでずっと向上心をもってやってきた。それはただ職業のために必要な知識を得るためじゃなく、人として成長するため。その事が、選手たちに接し、指導するときに役に立つ。ただ歳を重ねていれば選手たちの尊敬を勝ち取れるわけじゃない。選手たちは監督の事をよく見ているものだよ。
 
Q周りは今の貴方しか知らないと
Aそう、ボンボンが楽な道を歩んできたと思ってるだろ?(笑)
 
Qあなたは今ジャイルジーニョの息子ではなく、ジャイール・ヴェントゥーラとして見られています。
Aそうだ。偉大な選手の息子に生まれた事は楽じゃない。同じ道を選んだらなおさらだ。26歳で現役を退いて、ポジションは父と同じ同じFW、父との比較は避けられないよ。
 
Q監督になってからは少し(父と比較されるプレッシャーは)ましになった?
A選手と監督は別物だからね。私は自分で自分の居場所をみつけた。実家を出たのは16歳の時だった。のほほんと実家に留まって、親父の周りをウロチョロしても、そこそこ食べては行けたろうけどね。 父がこれまで私に与えてくれた物全てに感謝している。ただ、今自分がここにいるのは自分の努力だ。選手としても、監督としても自力で生き抜いてきた。監督としてもまた駆け出しさ。
 
Q最近フラメンゴの監督にコロンビア人のレイナルド・ルエダ氏が就任したことに不満だそうですが?
A全く話が誤解されて伝わっている。私はブラジル人監督の世界的評価の低さが気に入らない。偏見で見られているのではと言っただけ。ブラジル国内のチームが外国人監督を呼ぶことには全く異論はないよ。
 
 ボタフォゴについて僕が一番強調したいのは、ブラジル杯のことでなく、より重要なリベルタドーレス杯、昨年5位のボタフォゴは、予備戦からの出場だった。まだチームも完成しきっていない内から、チリのコロコロやパラグアイのオリンピアと言った優勝経験チームを倒し一次リーグ進出を決めると、そこでもアトレティコ・ナシオナルやエストゥディアンテスと言った優勝経験チームを蹴落とし16強に、決勝トーナメント一回戦で勝ったのも、ウルグアイのナシオナル。ここも優勝経験チームだ。
 
 準々決勝で当たるのは同じブラジルのグレミオ(優勝経験チーム)で、準決勝はおそらくサントスFC(もちろん優勝経験チーム)決勝はアルゼンチンのリーベルかサンロレンソ(言うまでもなく優勝経験あり)だろう。 それらを全部倒してチームに初の南米王者のタイトルを38歳の若さでもたらしたら、いったいどこまで出世してしまうのだろう?  英語とフランス語ができるなら、プレミアかリーグ・アンでも行けるだろう。 偉大な選手を父に持つサラブレッド監督の今後に注目だ。