ブラジルサッカー便り 

2014年よりブラジル、サンパウロ在住、サッカー大好きです。

コリンチャンス、明らかなハンドのゴールが認められて勝利、反響すさまじく、CBFはシーズン途中からのビデオ判定を導入へ

f:id:kimio_ido:20170920084734j:plain(© Daniel Augusto Jr. / Ag. Corinthians)

Corinthians x Vasco - Campeonato Brasileiro 2017-2017 - globoesporte.com

 17日にブラジル全国選手権1部第24節、コリンチャンスxヴァスコ・ダ・ガマ戦が行われ、コリンチャンスが後半28分にFWジョの決めたゴールで1-0と勝利したが、このゴールは実はハンドによるものだったことで、ブラジルでは騒ぎになっている。

試合ハイライトのリンク、3分50秒あたりから見て欲しい。後半途中から入ったコリンチャンスのマルキーニョスが左サイドを突破して、ゴール前にクロスを上げた。

 ヴァスコDFの伸ばした足がかすかにボールに触れたことで微妙な回転がかかり、ヴァスコのキーパーにも、中で待つコリンチャンスのジョにも非常に対処が難しいボールとなった。

 ゴールラインを割るかどうか、ギリギリの角度で上がったボールに、ジョは頭と共に右腕を伸ばして飛び込んでいった。結果的にボールは頭には触れず、右腕に当たりゴールイン。ヴァスコの選手の猛抗議も覆らず、そのままゴールは認められて、これが決勝点となった。

 ちょうどそのゴールの側のゴール裏スタンドで見ていた僕は、ゴールの瞬間「ん?今のほんとに頭だったか?肩か胸だったような気がするけど、ハンドで取り消されるんじゃないか」と思い、待望の先取点に喜びを爆発させるスタンドで一人、誰と喜び合うわけでもなく、「待て待て」とピッチの様子を見ていた。ヴァスコの選手が猛抗議しているが判定はそのまま。コリンチャンスは連敗中だったこともあり、どうしても勝ってほしかった僕は「ま、いっか」と応援を続け、およそ20分後の試合終了のホイッスルに安どした。

 その日に帰宅すると、TVやネットが大変なことになっている。ボールは確かにジョの頭での肩でも、胸でもなく、右腕に当たって入っている。まぎれもなくハンドだ。 いろんな角度でのリプレイを見ると、「ジョが触る前にボールはラインを割っていた。だからマルキーニョスのゴール」の説は弱そうだ。 

 ジョの腕がボールに触れていなければ、おそらくボールはポスト内側を叩き、その後どうなってていただろう?微妙な回転がかかっていたこともあり、そのまま入ったかもしれないし、外側にはねていたかもしれない。そのボールをヴァスコのキーパーが抑えていたかもしれないし、ジョが反応していたかもしれない。それは誰にも分らない。

 話がややこしくなっているのは、今年4月のサンパウロ州選手権準決勝、サンパウロFCxコリンチャンス戦で、ジョと、サンパウロのDFロドリゴ・カイオとサンパウロのGKが交錯した時に、ロドリゴ・カイオが誤って味方GKを踏んでしまったのを、主審はジョが踏んだと勘違いして、ジョにイエローカードを出すも、カイオが「踏んだのは自分で、ジョではない」と正直に申告し、ジョのイエローカードが取り消されるという一件があったからだ。その後のインタビューでジョは「カイオの行為は模範的、次は自分が同じようにしなくちゃね」と語っていたからだ。

 「あの一件であんなこと言っていたのに、なんで自分で『今のはハンド』と言わないんだ?嘘つき!偽善者!悪党!泥棒!見損なった!」とあらゆる罵詈雑言がジョに向かって投げかけられている。

 ジョの言い分はこうだ。「自分はなんとか頭で合わせようと夢中で飛び込んでいった。あの瞬間ボールが身体のどこに当たったか分からなかったんだ。分からなかったんだから。『ハンドだ』とは言えない」というもの。映像を見ると、ボールに故意に腕を伸ばしているように見えるが、頭で当てようとしているのに頭だけ前に出すのは不自然な気もする。頭に当てようとしてそれが空振りになって、腕に当たってしまったのかもしれない(故意じゃなかったとしてもハンドには変わりはないけど、、、)これは誰にもわからない。

 この一件の反響があまりに大きく、翌18日の月曜日にCBFが下した判断は驚きだった。もちろんゴールは取り消されず、試合結果もそのまま有効、審判も誰もおとがめなし、ここまでは予想の範囲内だが、次がビックリ「次節から全国選手権でビデオ判定を導入する」というものだった。

 シーズン途中のビデオ判定導入で、現場にどんな影響があるのだろう?高額な設備はちゃんと全会場におけるのか?ビデオで見るための人員は?ビデオ判定をどう行うかの訓練もされないまま慌てて導入しても、混乱は避けられない。ビデオルームと現場の主審の通信に不具合があることも考えられる。有利な判定を得るために猛抗議は当たり前のブラジル、ちょっと判定に不服があると、すぐ選手が手で四角を作って「ビデオだ!ビデオだ!」とやるに決まっている。

 ただ、僕もブラジル社会に少しずつ慣れてきた。

ハンド、大揉め、炎上、拙速かつ急進的すぎるトップの判断、とくれば次にくるのは朝令暮改(つまり、ビデオ判定はやっぱ来年から)と予想する。

 ついでに言うと、25節だけ導入されたビデオ判定で、ビデオ判定がなければ取られなかったはずのPKなどで試合に負け、勝ち点を失い、シーズン末に降格したチームが訴訟を起こすところまで、冗談半分で予想しておく。