イングランドxブラジル 伝統国同士の対戦は0-0の引き分けに終わる
ドリブル突破を図るネイマール(Lucas Figueiredo/CBF)
11月のFIFAマッチデーウィーク。ハリルジャパンの苦戦や、欧州予選プレーオフに回ったイタリアが、まさかのロシア行きを逃がすなど、話題は様々だが、ブラジル代表も10日の日本戦に続き、14日にはイングランド戦を行った。
ブラジル代表は、やはりあの対ドイツ7-1の敗戦ショックから完全に立ち直れているとは言い難く、最近のW杯では3大会連続で欧州勢に敗れて大会を去っていることから、南米諸国相手に無類の強さを誇った「チッチ・セレソン」(こんな言い方はブラジルではしない。念のため)も欧州勢にどこまで通じるかが、来年の大会にむけてのキーポイントだ。日本戦で軽くウォームアップ(怒る人もいるかもしれないけれど、ブラジルの報道がそうなのだから仕方ない。どうかご理解を…)してからの、今回の欧州遠征お目当てのイングランド戦で、チッチはいわゆる不動の11人をスタメンに並べてきた。
GKアリソン、DFマルセロ、マルキーニョス、ミランダ、ダニ・アウベス、MFカゼミロ、R・アウグスト、パウリーニョ、FWネイマール、コウチーニョ、G・ジェズス
何度も指摘しているように、1年以上、いやW杯本番まで引っ張れば2年近くスタメンを固定するのは危険としか言いようがない。いや、W杯では負けパターンとさえいってもよいが、チッチ監督が、「このメンバーで何度も試合をして、コンビネーションを熟成させてクラブチームのような連動性を築く。それにクラブチームでのプレーぶりで、この11人を追い越す選手が出てこない」と(仮に)言っているなら仕方がない。(仮に)としたのは、本当に記者会見などでそんなこと言ってはいないからだ。少なくとも僕は確認できていない。「いい加減ブラジルのマスコミもそのことを突っ込めばいいのに」と思っている。
対するイングランドは、いまノッテル男、トッテナムのFWハリー・ケインを怪我で欠き、5バックという非常にディフェンシブなシステムで臨んできた。
通常5バックといっても「実質3バックで両サイドは上がり気味のウイングバック(若干死語)として攻撃参加」といったシステムになることが多いが、今日のイングランドは本当に5人のディフェンスが1列にならんでラインの上げ下げを行っていて、ピッチの横幅に対して窮屈そうでさえあった。
攻めあぐねたブラジルはこれもお決まりの選手交代、ほとんど「12番目のレギュラー」と言えるウィリアンを怪我明けのコウチーニョに代え、フェルナンジーニョを、「だいたい一番早く交代させれられるレギュラー」R・アウグストに代えて同時投入した。
フェルナンジーニョは、本来カゼミロの代わりのアンカー。しかしカゼミロを下げずに残し、フェルナンジーニョも入れると、守備力のあるMFが2枚並ぶことになる。ここでパウリーニョをダグラス・コスタに代えて、左ウィングに置き、ネイマールを中盤中央にスライドさせての4-2-3-1も面白いかもと思ったがそうはならなかった。
「フェルナンジーニョ・パウリーニョ・カゼミロなんて中盤は遊び心がないなあ」と思いはしたが、フェルナンジーニョはマンチェスター・シティであのペップ・グァルディオラ監督の薫陶を受け、これから攻撃センスも磨かれていくのかもしれない。むしろすでにその兆候をチッチは嗅ぎ取っているのかもしれない。
イングランドは5人も交代させたのにブラジルは公式戦と同様に3人しか交代させず、3人目もG・ジェズスOut、フィルミーノInと、これまでおなじみの交代に終始した。
この時期にブラジル戦と親善試合をやる意味を考えた場合、日本はわりと素直に力試し的に戦ったのに対し、イングランドはそれこそ、本番で当たった時に勝ち点が取れるような戦い方のリハーサルのように戦った。
試合は大きな見せ場もなく、0ー0で終わったが、ブラジルにとっては、チッチ体制初の欧州チームとの戦いという意味が、イングランドには、「主力が怪我でいなくても、ベストメンバーのブラジルに引き分けられた」という自信を持てたという意味があった試合だったように思う。
次のFIFAマッチデーウィークは来年の3月。ブラジルはついに7-1以来の再戦となるドイツ戦と、本番の地に慣れるためのロシア戦を行う。