ブラジルサッカー便り 

2014年よりブラジル、サンパウロ在住、サッカー大好きです。

リーガ・エスパニョーラのセヴィージャ移籍間近? コリンチャンスの左SBギリェルメ・アラーナ(20)の素顔

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怖いもの知らずの若武者、コリンチャンスのレギュラー左SBのギリェルメ・アラーナ(© Daniel Augusto Jr. / Ag. Corinthians)

 

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 最近、ヨーロッパのサッカー情報を伝えるサイトに、「コリンチャンスのギリェルメ・アラーナ、冬のマーケットでスペインのセヴィージャに移籍か?」との報道が出ている。彼を巡っては、以前から「欧州クラブが獲得に興味」といった報道が流れていたが、その信憑性がグッと増したのは、11月15日の試合で優勝を決めた直後のインタビューで、「ユースからここまでやってきて、20歳にして3つもタイトル(2015年のブラジル全国選手権、2017年のサンパウロ州選手権とブラジル全国選手権)が獲れてうれしい。でも、自分の夢を追わなきゃ、もうすぐヨーロッパに行く」と喋ってしまったのだ。その後もアラーナは「まだサインはしていないけど、(僕の周りの)すべての状況が、もうスペイン、セヴィージャ行きを示している」と語った。

 アラーナは、2014年1月に行われた、ブラジル全土からU20のチームが集まる大会、コパ・サンパウロで当時のトップチームを率いていたマノ・メネぜス監督の目に止まり、トップチームに引き上げられた。その年はほとんど出番はなかったものの、2015年には貴重な左SBの控えとして活躍。全国選手権で12試合に出場し、若干18歳にして全国選手権優勝の栄光を勝ち取った。印象的な彼の言葉に、「チームの中で一番若くて、気後れしない?」と聞かれた際の、「いいや、俺からいじってるし」というものがある。その言葉通り、アラーナは精神力が強く、ポジション柄ゴールを決めることは少ないものの、大事なダービー、パルメイラス戦で2得点(2015年と2017年、両方ともAway戦で)をあげてもいる。

 同じポジションのレギュラー選手が昨年限りで移籍したことで、今年から完全にレギュラーを獲得したアラーナに、「先物買いして高く売る」傾向の欧州クラブが目をつけるのも時間の問題だった。

 先ほどアラーナは気持ちが強く、年上の選手も、むしろ自分からいじると紹介したが、今年そのふてぶてしさが悪い方向に表れたシーンがあった。 20歳の売り出し中のサッカー選手は、当然モテないはずもなく、使い慣れない大金を手にしたことで、「綺麗なおねえさん」とイイコトをし、それを自分の携帯で録画、インスタグラムに間違って投稿してしまうという事件を起こしたのだ。日本だったら大問題で、クラブが謹慎処分を課しそうなものだが、ここはブラジル。特に処分されることもなく、本人もすぐに消して、「プロ選手としてふさわしくない行動を取ってごめんなさい」と投稿し、何事もなかったかのように試合に出続けたのだ。

 ゴール裏で観戦していた時にこんなシーンも見た。自陣ペナルティエリア内のボールで、後ろのGKカッシオが「俺が取る」と言っているのに、スタジアムの大歓声で気づかず外に蹴りだしてしまい、相手のスローインになった時、カッシオに「俺が取るっつってんだろーが!」と言われて、返した返事が、「うっせー、聞こえねーよ!」だった。でもここはブラジル。その後も二人は何事もなかったかのようにプレーを続け、試合に勝つと握手とハグだった。

 実際に日本の記者が書いたのか、それともスペインの報道を訳したのかは定かではないが、「アラーナはロべカル2世」と報じた記事を見た。 

 しかし、それを言うのはちょっと早いんじゃないかと思う。アラーナはU20ブラジル代表でもあるが、今年1月のU20南米選手権でブラジルは4位にも入れず、U20W杯出場を逃している。谷間の世代の代表といってもよい。

 それに攻撃が大好きで、ノリノリでガンガン攻めている時は良いが、チームが劣勢に立たされた時、守備での踏ん張りが今一つだ。特に右サイドを攻められ、ディフェンスラインが全体的に右に寄ってしまった時、クロスが上がってきて、自分がゴール中央で競らなくてはいけない時にかなり弱い。

 セヴィージャが獲得してきたブラジル人選手と言えば、FWのルイス・ファビアーノや、サイドこそ逆だが、右SBダニ・アウヴェスがいる。そこで求められるレベルはかなり高いはず。しかも、今年1月からサンパウロ州選手権、ブラジル全国選手権とフル稼働で、相当疲労もたまっている。だからセヴィージャは、冬のマーケットで獲得しても、今期スペインリーグ後半戦でいきなりの大活躍を求めず、「今期の残りは適応期間」と長い目で見てあげて欲しい。