ブラジルサッカー便り 

2014年よりブラジル、サンパウロ在住、サッカー大好きです。

満員マラカナンのフラメンゴ戦は無形文化遺産なのに、それを自分たちで台無しにするフラメンギスタたち

 

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ブラジル杯に続き、スダメリカーナ杯でも準優勝に終わった、フラメンゴ

(Gilvan de Souza / Flamengo)

http://globoesporte.globo.com/rj/futebol/copa-sul-americana/jogo/13-12-2017/flamengo-independiente/#video-id=6355522

(試合前のスタジアムの様子)

http://globoesporte.globo.com/ge/videos/v/confusao-no-entorno-do-maracana-durante-final-entre-flamengo-e-independiente/6355751/

(試合後のスタジアムの様子)

 

 13日の水曜日、リオのマラカナンスタジアムで、スダメリカーナ杯の決勝第2試合、フラメンゴxインデペンディエンテ(アルゼンチン)戦が行われた。

 ちょうど一週間前に行われた敵地の初戦で1-2と敗れていたフラメンゴは、逆転勝利のためには2点差以上の勝利、最低でも1点差で勝って180分トータルで同点、延長戦に持ち込む必要があった。アウェイゴールルールがなかったので、フラメンゴ1点差勝利の場合、1-0だろうと、2-1だろうと、3-2だろうと、扱いはどれも変わらず延長突入だ。

 前半早々にU20代表のルーカス・パケタがセットプレイからのもつれを押し込み、トータルスコアで同点に負いつくが、それから10分もしない内に、ボランチの不用意なプレーからインデペンディエンテにPKを献上、これを決められ1-1。トータルスコアで上回られた。
 リオ州選手権で優勝、ブラジル杯でも決勝進出、リベルタドーレスの一次リーグ3位からの復活措置で参加する事になったスダメリカーナ杯でも決勝に進んでいたため、このシーズン最終戦が今年のフラメンゴの公式戦83試合目だった。エースFWのゲレーロを出場停止処分、欧州帰りの元ブラジル代表GKジエゴ・アウヴェスを準決勝での負傷のため失ったフラメンゴは、この試合の勝ち越し点、トータルスコアでの同点を狙って、来夏のレアル行き内定のヴィニシウス・ジュニオール(17)や、今年のU17W杯でも活躍したリンコン(16)などのFWを次々に投入するも、ゴールは奪えずにそのまま終了。国際大会、カップ戦にめっぽう強いアルゼンチンの名門、インデペンディエンテが優勝した。

 実は今日メインで伝えたいのは、試合の事ではない。とにかくこの試合は始まる前も終わった後も、スタジアムの外での騒動が多すぎた。試合前日にはインデペンディエンテの選手たちが泊まるホテルにフラメンゴファン押し寄せて、夜中に周辺で打ち上げ花火を連発、ホテルに侵入を試みる者まで現れた。 ホテルが設置した簡易の柵を外して警備員にブン投げる様子もはっきりニュースの映像に映っていた。

 幸いインデペンディエンテ側に怪我人もなく、インデペンディエンテ側は公式ツイッターに、「リベルタドーレス最多優勝を誇る俺たちを迎えて心が高ぶっちゃうんだね。よくわかるよ。歓迎ありがとう」などとつぶやく余裕を見せたが、試合当日も混乱の度合いはさらに拍車がかかった。

 マラカナンは6万人を超す観衆がつめかけ満員となったが、チケットを持たずに入ろうとする不届き者が大量に現れ、ゲートを強行突破しようと試みたり、柵を破壊してそこから入った人間もいた。すぐに警察が飛んできて、催涙ガス弾を発射し追い散らしたが、かなりの人間が捕まらずに入った事だろう。混乱のせいででキックオフに間に合わない人も続出した。

 試合前にはフィールドにパラシュートをつけた男が空から降りてきて無事に着地。観客から喝さいを浴びたが、しかしこれは演出などではなく、チームとは無関係のただのファンだった。(1万レアルの罰金)
 試合が終わったのは夜の11時45分ごろ。敗北にいらだつ一部のファンが仲間同士で喧嘩したり、警官にガラス瓶を投げつけたりと暴れまくった。泣き叫び、逃げ惑う親子連れや高齢者だっていた。 余りの人の多さに、誤って車がファンをはねると、助けようと車から出てきた運転手を取り囲みボコ殴り。ちゃっかり車から携帯電話を盗んだガキもしっかり防犯カメラに映っていた。
 この事件をCBFもCONMEBOLも重く見ており、今後フラメンゴには無観客試合やホームゲーム遠隔地開催、マラカナン閉鎖などの制裁措置がとられることは確実だ。

 今年のスダメリカーナ杯は決勝第2戦がリオのマラカナンということもあり、特別感があった。どこの国のどのチームが決勝に出て、どのスタジアムで行われる可能性も同じようにあったのに、運命のあやで、マラカナンが会場になったのだ。それも、同じマラカナンをホームにするも、ファンが少なく、応援もしょぼいフルミネンセではなく、ブラジルナンバーワン人気チームのフラメンゴだった。

 満員の観衆で埋まり、赤と黒に染まったスタジアムは本当にうつくしかった。どのチームだって、こんな雰囲気で試合が出来るわけじゃない。僕はマラカナンでのフラメンゴ戦を無形文化財と呼んでもいいのではないかと思うほどだ。「ブラジルに行って、リオのマラカナンでフラメンゴ戦を見たい」って世界中の人が思っても不思議じゃないのに、素晴らしい雰囲気を作る主役を演じているフラメンゴファンが、自分たちそれを台無しにするなんて。なんともったいない事をするのだろう。悲しくなってくる。