ブラジルサッカー便り 

2014年よりブラジル、サンパウロ在住、サッカー大好きです。

さよならジョー、名古屋グランパスへの移籍濃厚

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ありがとうジョー!日本でも頑張って! (© Daniel Augusto Jr. / Ag. Corinthians)

 

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 22日の午後5時ごろ、ビックリ仰天のニュースが飛び込んできた。見出しには、「コリンチャンス、ジョーを日本のチームに売却」と書いてあった。 あわててその詳細を読むと、なんと名古屋グランパスに移籍濃厚とでているではないか。

 コリンチャンスは膨大な額のスタジアム建設の際の借金があり、優勝してもその戦力を保つことができないのだ。2015年もそうだった。その時はレギュラーを8人も中国や欧州、国内のライバルに引き抜かれ、翌2016年は低迷した。まったく違うメンバーで挑み、低い下馬評を見返す形で2017年も優勝を果たしたが、すでにジョーも含め3人のレギュラーがチームを離れることが決まっている。

 ジョーはコリンチャンスの育成出身で、10代でプロデビュー。2005年の優勝メンバーでもあったが、すぐに欧州に行ってしまった。あまり真面目な性格ではなく、あふれる才能(だけ)でマンチェスター・シティに移籍するも、徐々にキャリアは下降線、2016年に中国リーグでも活躍できずに解雇されていたところを、コリンチャンスが移籍金ゼロで獲得したのだった。

 最初は「もう数年トップフォームから遠ざかっているジョーなんて使い物になるのか?」「不摂生で、不真面目なジョーに賭けざるをえないなんて、今年もコリンチャンス終わったな」との声が多数だったが、ジョーもチームもそれを見返し、サンパウロ州選手権、ブラジル全国選手権優勝をはたした。

 左利きの190センチのストライカーは、高さだけの選手ではない。ゴール前に自由に動き回るし、ウラ抜けのセンスもある。チームが押し込まれて、低い位置でボールを奪った時、唯一前に残っていたジョーにパスが回った。そんな状況でもグイグイとドリブルして、強いシュートを枠に蹴れる選手だ。(リンクの映像2分50秒からのフラメンゴ戦のゴール)今年彼のプレーを見ていて、「えー(失笑)」とか「あー(落胆)」とかの声をだした記憶がほとんどない。

 Jリーグ開幕時からのグランパスファンでもあり、2012年のコリンチャンスのクラブワールドカップ優勝を目撃して以来のコリンチャンスファンでもある僕は、移籍の話を聞き、複雑な気持ちになった。でも幸いなことに、このニュースが明るみにでて以来、友達のブラジル人のコリンチャンスファンから、「お前の好きな名古屋グランパスが、俺たちのコリンチャンスからジョーを奪ったんだ!どうしてくれる!」とは一度も言われていない。

 むしろ、「確かに痛手だけど、移籍金タダで取った選手が大活躍して、一年後に1100万ユーロも残してくれれば、チームの財政状況からしても、文句は言えない。」との声が多く、救われた気分だ。

 「素行が良くなくて、落ちぶれたジョー」のことを知っている人は結構いるので、伝えたい。彼は、人生のドン底まで落ちた時、奥さんの勧めで教会(キリスト教プロテスタントの福音派)に通うようになり、改心して真面目になった。だいたい、真面目じゃなかったら、ストイックにトレーニングしなかったら、ブラジル1部リーグで得点王になんかなれないし、「ロシアW杯に向けて、滑り込みでセレソン入りも?」なんて声もあがらない。自らの2得点で優勝を決めたホーム、フルミネンセ戦のあと、チームのマーケティングスタッフに、スポンサーのビールを「これはノンアルコールだからカメラ目線でグビグビってやって」と言われても、「ビール無理、他の選手に頼んで」と断っている。だからグランパスファンはその点は安心して欲しい。

 正直、この移籍でコリンチャンスの2018年リベルタドーレス杯制覇の夢は確実に遠のいたが、ブラジルのライバルチームへの移籍ではなく、他でもない名古屋グランパスへの移籍ということで、僕の心も少しは落ちついている。移籍の激しいブラジルサッカー界、悲しいけれどコリンチャンスは選手を失うのは慣れっこ。グランパスとの契約が終わったら、またコリンチャンスに戻ってきて欲しい。フレッジやリカルド・オリベイラのように30代半ばでも活躍できる選手はいる。 頑張れジョー、新天地での幸運を祈る! そして、僕と同じグランパスファンのみなさん、彼を信じて、その才能を引き出すような、応援、励ましを頼みます。