ブラジルサッカー便り 

2014年よりブラジル、サンパウロ在住、サッカー大好きです。

仁義なき引き抜き合戦。短いブラジルのオフシーズンは移籍のニュースで持ち切り。

 先日はジョーの15億円グランパス移籍の話題を取り上げたが、22日に「クリスマス明けにもメディカルチェックを行い正式発表」の報が出ていたのに、26日になっても、27日になっても一向に続報が出てこない。これを書いている1時間前、ブラジリア時間27日午後3時47分のウェブニュースでも「ジョーは手続き上の問題でまだ日本には向かっていない」とだけ出ていた。コリンチャンス側も腕利きの弁護士を抱えているし、ちゃんと移籍金は欲しいだろうから、手続き完了も時間の問題だろう。グランパスのファンの方々は焦らずに合流を待ってほしい。

 

 さて、当然ながらコリンチャンスのジョー以外にもブラジルリーグは移籍が活発に行われている。日本の方に、少しはなじみがあるかもしれない選手の動向を中心にお伝えしたい。

 ここ数年ブラジル国内移籍市場の主役の座を務めているのは何と言ってもパルメイラス。コリンチャンスの宿敵だ。2013、2014年と、クルゼイロを連覇に導いた敏腕GMを2015年から雇い、メインスポンサーの金融会社が資金面でもサポートしている。

 2016年に全国選手権を制覇し、さらなる補強でリベルタドーレス杯、クラブW杯も獲ってしまえとばかりに、2016年のアトレティコ・ナシオナル(コロンビア)リベルタドーレス杯優勝の立役者のコロンビア代表FWボルハに、ベネズエラ代表の中盤の要ゲーラ、元ブラジル代表ボランチのフェリペ・メロなどを獲った今年は、チームの歯車がかみ合わず無冠に終わったが、件の金融会社の女社長は「今年ダメだったじゃないかって?まぁ、落ち着いて。来年に向けての補強資金もドーンと出すわよ!」とサポートを確約している。 

 パルメイラスはこれまでに、同じサンパウロ州のライバルサントスFCのトップ下10番元ブラジル代表のルーカス・リマを引き抜き、弱点だった左右のSBには地味で代表歴もないが、今年のブラジル全国選手権では評価の高かったブラジル人を獲った。リオの名門フルミネンセから、中盤のグスタヴォ・スカルパも狙っているとの噂だ。資金難で選手を取られてばかりのコリンチャンスとしては羨ましい限り、余った選手をレンタルで分けて欲しいくらいだ。

 これまでの国内移籍で最もインパクトが大きかったのは、クルゼイロが同じ街ベロ・オリゾンチを本拠にするライバルアトレチコ・ミネイロからFWフレッジを獲得したことだ。フレッジはフランスリーグのリヨンにいたことと、2014年ワールドカップに出場したことで日本の方にも知られているだろう。

 こちらはドライな契約社会なので、有力選手の契約期間が、他チームとの交渉が可能になる、残り半年を切ればすぐに周りが騒ぎ出す。当然契約期間中でも欲しいとなれば、そして移籍金を払えるならば躊躇なくオファーを出す。2部に落ちてチームのステータスが落ちてしまったチーム(去年のインテルナシオナル)、資金難でお金に困っていることが知れ渡ってしまったチーム(コリンチャンス)などは引き抜き工作の良い餌食だ。

 ブラジル人選手は世界中で活躍している。全盛期を欧州のトップチームで過ごしてきたが、そろそろそのレベルでは苦しくなってきた、ブラジルに帰ろうかとなった際も日本のように、お約束のように古巣に戻ったりはしない。その選手を欲しいと思ったチームは躊躇せずオファーを出すし、選手だって、その内容が古巣からのオファーよりも魅力的ならば、躊躇せずそっちに行く。

 最近は「ネイマールが子供の頃はパルメイラスのファンだった」という暴露話が話題になった。おそらく、「ネイマールがブラジルに帰ってのプレーを希望」となっても、どこのチームも邪魔せずにすんなり古巣のサントスFCに戻ることはないだろう。それこそパルメイラスが(ブラジル基準では)超高額のオファーを出すだろうし、ネイマールはそれをサントスFCからの復帰オファーと同様に検討するだろう。ダービー仇だろうと関係ない。

 そんな事情がある為、ブラジルのチームは1年もたてばかなり陣容がかわっているし、2年もたてばほとんどのチームのスタメン11人はその原型をとどめていない。それでもファンは「選手の行き来は仕方ない。俺たちはただひたすらにチームだけを愛する。チームよりも重要な選手など存在しない」と割り切っている。

 来年のブラジル国内サッカーは、ワールドカップの関係で州選手権が前倒しで開幕し、1月17日が初戦という州がほとんどだ。しかし、引き抜きを掛ける外国チームはそんな事情お構いなしに、1月末の冬のマーケット終了まで、揺さぶりをかけ続け、選手も「開幕したし、チームに迷惑かけられない」なんてこれっぽっちも思わずに移籍するだろう。

 優勝して選手の評価がグーンと上がってしまったコリンチャンス、財政難で選手を売っていかなきゃいけないコリンチャンスはどこまで今年の主力を保てるのだろうか?