ペルー代表の大黒柱ゲレーロを、W杯出場停止の危機から救ったのはミイラだった!
まだ5カ月残っているゲレーロの出場停止処分は解かれるのだろうか?
(写真中央・Bruno Cantini/Atlético MG)
昨年、36年ぶりのワールドカップ出場を決めたペルーだったが、大黒柱のセンターフォワード、パオロ・ゲレーロ(フラメンゴ)の体内から、コカインに含まれるベンゾイルエクゴニンという物質がドーピング検査で検出され、FIFAから1年の出場停止処分を受けていた。
この処分が確定すると、当然6月のロシア・ワールドカップには出場できない。「コカインなんてやっていない、ペルーでは一般的に飲まれているコカ茶を飲んだだけ」と本人も弁護団も主張して、その後出場停止処分は半年に縮まった。
さて、「コカ茶を飲んだだけ、その弁明が認められた」と書けば単純な話だが、これをFIFAに認めさせるために弁護団が出した証拠が凄かった。それは1999年にアンデス山脈で見つかった3体のミイラに関する論文だった。
このミイラは、2人の女の子、1人の男の子のもので、アルゼンチンとチリの国境に位置する、標高6700メートルの火山ユーヤイヤコで見つかっていた。
以下Wikipedia「ユーヤイヤコ」から引用
1999年にアルゼンチン・ペルー合同遠征隊が、山頂にて約500年以上前のものと見られる、人身御供とされたインカ人の子ども3体のミイラを発見。非常に保存状態が良好であった。その後、ミイラはアルゼンチン、サルタ州の考古学博物館に展示。
2013年に行われた、これらのミイラに関する生物学的分析によると、人身御供となる前年にコカやアルコールを摂取していたなど、特異な生活様式や食生活が明らかになったという。
(引用終了)
3人の子供たちが生きていたのは1480年から1532年の間とされる。1人の女の子のミイラの毛髪からは、500年近く経った後でも、相当量のベンゾイルエクゴニンが検出されていた。コカインが発明されたのは19世紀のことだから、「子供ミイラはコカインをやっていたのだ」とは言えない。ミイラの歯の間からはコカの葉が出てきている。
これでゲレーロ側の、「コカ茶を飲んだだけ、その成分が身体に残ってドーピング検査の時に出てきた」との主張の信憑性は増した。(「絶対にコカインなどやっていない」とまでは、これだけでは証明できないけど…)
500年近く前のインカ帝国のいけにえの儀式の犠牲になった、子供のミイラに関する研究論文まで使って無実を主張し、ワールドカップに出られないという最悪の事態は避けられたが、「FIFAは弁明を認めたのだからいっそ無罪に、出場停止処分なし」を目指して、ゲレーロ弁護団の戦いは続いている。