本田が加入するボタフォゴについて
先月末に突如降ってわいた「本田、ボタフォゴ入りか?」の噂は、遂に実現してしまった。本田がメキシコ、オーストラリアとサッカー旅人となっていた時、「ブラジルなんかどうだろう?」とつぶやいた記憶があるのだが、実現してみればうれしい気持ち、不安な気持ちが半々だ。
本田の入るリオのボタフォゴはどんなチームかというと、フラメンゴ、フルミネンセ、バスコダガマらと、リオのビッグ4を形成するが、その中でも現在は最も勢いがないチームだ。
過去には「ペレのサントス対ガリンシャのボタフォゴ」などと、ブラジルでも屈指のチームだったが、そんなに昔だと、もう神話の世界か。
ビッグ4の中でフラメンゴは人気、実力共に突出している。去年はリオ州、ブラジル、南米を制覇。スタメンどころかベンチにまで代表経験、欧州名門クラブ経験のある選手を揃えている。
他のリオビッグ4の去年のブラジル全国選手権の成績は、バスコが12位、フルミネンセが14位。ボタフォゴは15位で、あわや降格の憂き目に遭うところだった。
ボタフォゴは2014年に全国選手権2部に降格。1部に復帰した2016年は堂々の5位で、2017年に出場したリベルタドーレス杯ではベスト8に進出。これが近年では最高の成績だ。近年は目立った選手も特におらず、ゴールキーパーにパラグアイ代表のガティートがいるくらいか。少し前までなら元Jのピンパォンやホジェル、ラファエル・マルケスなどがいたのだが、いかんせん今のメンツは勉強不足でほとんどわからない。
しかし本田への期待の高さは日本人の僕には驚くほどだ。2019年にメルボルン・ビクトリーを退団して以降、「なんで俺にオファーしないんだ」ツイートで失笑を買い、去年11月にフィテッセに入ったかと思ったら12月にはすぐ退団と、「日本サッカーの大功労者だが、選手としてはもうそろそろ潮時。最近はビジネスやSNS、カンボジア代表監督やリアルサカつくでの話題が目立つ」という印象が正直な所。
それなのにボタフォゴのファンは#本田さんボタフォゴに来て のツイートをバズらせ、7日リオの空港には2000人が出迎え、翌日のスタジアムでのお披露目にも1万人近くで大歓迎。新加入選手のために、近年こんなに盛り上がったのは去年のダニ・アルベスのサンパウロFC入りの時くらいじゃないか。
ただ、ボタフォゴファンは本心から期待している、盛り上がっているんじゃなくて、「期待したい」「盛り上がりたい」のではないかと僕は思う。自分たちは2部落ち回避がやっと。有名選手もいない。チケットの値段下げてもスタジアムはガラガラ。
憎いダービー仇のフラメンゴは栄華を極めやりたい放題。チケット価格を非常に高くしているのに、マラカナンはいつも5万、6万と入っている。
そんな中、「ワールドカップ3大会出場。全大会で得点もアシストも決めた日本人選手が入団」となり、飛びついたのだ。ブラジルマスコミだって、パチューカ、メルボルン、フィテッセと続く迷走を知らない訳ではなく、「はたしてどこまでやれるか?」と成功を疑いながらも、ファンの熱狂をみて乗っかっているのだ。
本田は「ボタフォゴ入りは人生最大の挑戦」「近年下位なら、それは自分にとっても仲間にとっても逆にチャンス」「プレッシャーは大好き」「日本人の代表としてブラジルサッカーへの恩返し」とブラジル人がグッとくる言葉を会見で語った。 元々ハートの強さは誰にも負けない男。「悪口書いてる人、ボロクソ貶してくれる人ありがとう」と言えてしまうような強心臓。
日本のサッカーファンの多くは、2010年代はほぼずっと、彼に夢を託してきた。何度も逆境に立たされながら、跳ね返してきた本田。
「今回も見せてくれ」の思いと「さすがにもう無理じゃないか。もしダメだったら、今あんだけ熱狂してる分、ファンから容赦なく叩かれるぞ。そんなのは見たくない」という思い半々で彼の挑戦を見守っている。