ブラジルサッカー便り 

2014年よりブラジル、サンパウロ在住、サッカー大好きです。

U20 W杯決勝 イングランドxヴェネズエラ戦

韓国で行われている、U20W杯決勝のイングランドxヴェネズエラ戦をTV観戦した。


ヴェネズエラと対戦した日本の選手が、「10番ソテルドが変態的に強かった」と語る記事

ソテルドは“変態”的に強かった!U-20W杯で原輝綺が見た世界レベル。 - サッカー日本代表 - Number Web - ナンバー

を読んで、興味を惹かれたからだ。


いつもコリンチャンス戦ばかり、サッカーそのものの質はともかく、「コリンチャンス勝て!!」とばかりイレ込んで見ているから、たまにはちゃんとサッカーを見てみようと思った。


ヴェネズエラは、経済危機、政治危機が深刻化していて、反政府デモも頻発、強権的な大統領はデモを弾圧して死者も発生し、国境を接するブラジルにどんどん人が逃げ込んでくるニュースを見ているので、「そもそも選手たちのサッカー環境はどうなっているんだろう?」と心配していたが、ピッチの上だけを見る限り、選手たちの発育や栄養状態は良さそうだ。


お目当てのソテルドは先発しなかったが、ヴェネズエラはテクニカルなサッカーを披露、細かくパスをつなぎ、開始早々はペースを握る。
対するイングランド、引きの映像で見るとはっきり分かる典型的な4-4-2。しかしハイボールに偏るわけでもなく、左右のMF前にロングボールを蹴りこんで、縦に単調なプレーをするわけでもなく、組織的な組み立てからゴールを狙う。
前半35分、ロングボールを競り合ったイングランドのルーウィンがこぼれ球をシュートするも、一旦はGKに止められた。しかしルーウィンは弾かれたボールにさらに反応して押し込んでイングランドが先制した。
後半5分にヴェネズエラは10番ソテルドを投入すると、直後の7分、ソテルドが絶妙なスルーパスを繰り出す。このパスに抜け出したコルドバがビッグチャンスを迎えたが、イングランドのGK、ウッドマンがセーブした。
ヴェネズエラは19分にPKのチャンスを得るも、ペニャランダのキックはまたもGKウッドマンに止められた。
その後もヴェネズエラが、ソテルドや、ペニャランダのドリブルを中心に攻めたてるも、イングランドがそのまま1-0で逃げ切り、U20W杯初優勝を果たした。

 

この試合は、お互いにとって、まさに異文化体験と言えるものだった。

試合前日に同宿のウルグアイと乱闘騒ぎも起こしているヴェネズエラ、南米同士の対戦では、挑発、シミュレーション、大したことのないファールなのに、大げさに痛いふりをしたりするのが当たり前。フリーキックの位置や、スローインの位置もごまかし放題だが、そんな文化はイングランドにはない。相手がやってこないなら、自分たちだけズルしまくろうとはならず、また、決勝の舞台に敬意を払ったのか、ヴェネズエラが南米スタイルの狡猾なプレーをするシーンはほとんどなかった。

 

片やイングランドは、ヴェネズエラの細かくつなぐスタイル、狭いところを執拗にドリブルでついてくるスタイルには慣れるのに苦労したはず。イングランドは基本的に、パスを線でつなぐと、大きな図形が描かれるが、ヴェネズエラはその図形が小さくなる。また、股抜きのようなテクニックも、ヴェネズエラは多用するが、イングランドはほとんど使わない。毎日ブラジルサッカーを見慣れている筆者には、イングランドのスタイルが新鮮だった。

またフェアプレーの観点でも、こちらでは全く無視されている。スポーツの綺麗事が守られていて、それにヴェネズエラも感化されたのか、クリーンな試合が展開されたこともよかった。

 さてこれから、まったくスタイルの違う、ブラジルの、大の大人の勝つために手段を選ばないプロサッカー、しかもクラシコ、コリンチャンスxサンパウロ戦を見に行ってきます。