ブラジルサッカー便り 

2014年よりブラジル、サンパウロ在住、サッカー大好きです。

リオのクラシコで悲劇 ホームチームの敗戦に怒った暴徒がピッチに侵入を試み、警察と衝突 混乱で1人が死亡

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フラメンゴの選手たちも、試合後しばらくロッカールームに戻れなかった

(Gilvan de Souza / Flamengo)

 7月8日、リオのサンジャヌアリオ・スタジアムで、共にリオを本拠とするヴァスコ・ダ・ガマ(以下ヴァスコ)対フラメンゴのクラシコ(ダービー)が行われた。

 リオを本拠とする主要4チームは、フラメンゴ、フルミネンセ、ヴァスコ、ボタフォゴで、このチーム同士の対戦をクラシコと呼ぶ。フラメンゴとフルミネンセの対戦が、フラ・フルと呼ばれ、プレステージが高いとされているが、近年最もサポーター間のライバル意識が高いのは、フラメンゴとヴァスコの対戦だ。

 前節11節終了時まで、フラメンゴが3位、ヴァスコが6位と、共に来期のリベルタドーレス出場圏につけ、サポーターの熱気もヒートアップ、チケットも完売で迎えたこの試合でまたも悲劇が怒ってしまった。

 試合自体はミスの多い凡戦で、後半17分に攻撃陣のタレントに勝るフラメンゴのエヴェルトン・リベイロの右からのクロスをもう一人のエヴェルトンがヘッドで決めて先制、そのまま押し切った。

 事件が起こったのは試合後だった。もともと試合前から、ファヴェーラ(スラム街)と目と鼻の先にあるスタジアム周辺では小規模の騒動は頻発していた。試合後、ホームチーム、ヴァスコの敗戦に起こったサポーターがピッチに侵入を試み警察と衝突。スタジアムはゴム弾や催涙スプレーも飛び交う戦場と化してしまった。

(映像がリンクで見られる)

 Torcedor morre baleado no tórax nos confrontos em São Januário | vasco | Globoesporte 

 様子を伝える記事の部分を引用、要約すると

 27歳のヴァスコファンの男が試合後スタジアム9番ゲート付近で銃撃を受け死亡した。彼のほかにも2人のヴァスコファンが脚に銃弾を受けたが命は無事だった。ガラスの破片で怪我をした人も命に別状はない。スタジアムの中だけでなく、周辺でも混乱は続いた。ヴァスコファンの集団が警察にガラス瓶や石を投げつけた。アウェイのフラメンゴサポーターは試合後スタジアムに軟禁状態となった。スタジアム周辺ではガラスの破片、石、薬莢が転がっていた―グローボエスポルチより

  まずは僕と同じサッカーファンだった、27歳の男性のご冥福をお祈りしたい。

 報道を見るに、犬猿の仲であるヴァスコとフラメンゴのファン同士が喧嘩になったわけではなさそうだ。同じチームのファン同士が喧嘩することも頻繁にあり、今回もその可能性がある。不可解なのは、通常警察の発砲は音で威嚇し、当たっても致死性が低いゴム弾であることが多く、そんなに簡単に実弾を撃たないのに、銃撃による死者がでていることだ。混乱で冷静さを失った警察が撃ったのだろうか、それとも銃で撃ったのは警察以外の人間だろうか。まだ調べはついていない。

 ブラジル、サンパウロでは昨年以来、主要4チームが戦うクラシコでのアウェイサポーター入場禁止措置が取られている。「スタジアムは満杯、スタンドは2色にきれいに分かれ、旗もなびき、応援のトーンも普段とはけた違い」そんな古き良き時代のクラシコはもう見られないのだろうか。今回は別のチームを応援するサポーター同士の喧嘩である可能性は低いとはいえ、勝利に喜び、挑発するフラメンゴファンの存在が、ヴァスコファンをいきり立たせた可能性は否定できない。リオの警備当局がクラシコのアウェイサポーター入場禁止措置を取るのも時間の問題だ。