ブラジルサッカー便り 

2014年よりブラジル、サンパウロ在住、サッカー大好きです。

白熱のワールドカップ南米地区予選 コロンビア、パラグアイ、アルゼンチン、ペルーの運命を狂わせた、コロンビアGKオスピナのミス

 

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  9月にブラジルと対戦した時のコロンビア(Lucas Figueiredo/CBF)

 来年ロシアで行われるワールドカップの南米地区予選が大詰めを迎えている。南米サッカー連盟(CONMEBOL)加盟10カ国の2回戦総当たりで、2年もかけて行われてきた長丁場の予選も、10月5日と10日の第17、18節で決着がつく。

  南米からは上位4位までが本大会に自動出場で、5位のチームは11月にオセアニア地区1位のニュージーランドと、出場権をかけてのプレーオフに回る。

  今回の予選はブラジルが、昨年チッチが就任してからの破竹の8連勝で悠々と突破を確定させた以外は大混戦だ。 

 10月5日の17節が始まる前、16節終了時では2位ウルグアイ(勝ち点27・以下同)、3位コロンビア(26)、4位ペルー(24)、5位アルゼンチン(24)、6位チリ(23)、7位パラグアイ(21)、8位エクアドル(20)まで予選突破、またはプレーオフ行きのチャンスがあり、すでに突破の目がなくなっていたのは9位ボリビアと10位ベネズエラだけだった。

 10月5日の17節は、時差の関係でまず、ボリビアxブラジル、ベネズエラxウルグアイが先に終了し、共に0ー0の引き分けだった。ウルグアイは勝てば予選突破だったが、最下位のベネズエラに勝てなかった。ベネズエラは15、16節でもコロンビア、アルゼンチン戦を引き分けに持ち込んでおり、次の2022カタール大会予選からは油断できない存在かもしれない。

 20時30分に同時キックオフだった3試合 アルゼンチンxペルー、コロンビアxパラグアイ、チリxエクアドルは 全チームがまだ突破の可能性を残しているチーム同士の戦いだった。

 ホームゲームの会場を、いつもの陸上競技場のモヌメンタルから、観客席とピッチが近く、サポーターのプレッシャーが敵チームにかかりやすいボンボネーラに変更までして戦ったアルゼンチンだったが、予選通じて2番目に低い得点力(信じられないことにアルゼンチンはボリビアより多く点を取っているだけ!)がネックとなり、0ー0の引き分け。ボンボネーラをホームとする、アルゼンチン最大の人気チーム、ボカ・ジュニオルスのキャプテン、ガゴが、靭帯損傷の大怪我を負うも、ドクターに「(怪我なんて)関係ない!行かせろ!」叫ぶ姿が痛々しかった。

 これでアルゼンチンは勝ち点24 ペルーも勝ち点24 得失点差も+1で同じで、総得点がペルーの26に対しアルゼンチンは16、この差が両者の順位の差となった。

 

 9月シリーズでまさかの2連敗を喫し、出場権獲得圏外に落ちていたチリは、ホームにエクアドルを迎えた。実はエクアドルは予選前半こそ出場権獲得圏内をキープするも、折り返しから一気に調子を落とし、今ではチームの勢いという意味で言えば、ボリビアより、ベネズエラよりも下のチームだ。そんなエクアドルにチリは苦戦するも、なんとか後半40分のエース、アレクシス・サンチェス(アーセナル)のゴールで2-1と勝って、混戦の中勝ち点を26に伸ばした。 対するエクアドルは勝ち点20で予選敗退が決まった。

 問題のコロンビアxパラグアイだが、コロンビアは後半34分、大エースファルカオが決めて先制。このまま勝っていれば予選突破が決まっていたのだが、粘るパラグアイは後半43分と、アディショナルタイム1分に得点し大逆転。2つともコロンビアGK名手オスピナのミスから生まれた。コロンビアは勝ち点26のまま、パラグアイは勝ち点24に伸ばした。 

 この結果はもちろんコロンビアにとって痛恨で、パラグアイにとっては僥倖と言うべきものだったが、実は他の国々にも大きく影響を及ぼしていた。

 一番痛かったのはペルーだ。実際あるペルー人ジャーナリストはパラグアイの同点ゴールの時に既に「まずい!」とツイートしている。ペルーは、「敵地アルゼンチン戦は引き分けOK。最終節のホームコロンビア戦では、コロンビアが前に予選通過を決めていれば、その後は大パーティー。ペルー戦の戦意は著しく低くなるはず、よって勝てるはず」との計算だった。ペルーはコロンビアがパラグアイに勝って、先に予選通過を決めてほしかった。

 それが「コロンビア予選通過確定できず」でペルー戦が両者にとって大決戦になってしまった。

 恩恵を受けたのは、17節で必勝態勢で挑むも、ペルーに引き分けてしまい、順位を上げることが出来なかったアルゼンチンだ。コロンビアにさっさと出場権獲得圏内に逃げられて、次のペルー戦をコロンビアが真面目に戦わず、ペルーに勝ちを譲られでもしたら、アルゼンチンは最終戦エクアドル戦に勝っても、5位にも入れない可能性があった。それが、ペルーxコロンビアが最終節で潰しあいになるので、アルゼンチンは勝ちさえすれば、最低でも5位には入れることが決まった。

 もちろん7位パラグアイも、次のホームベネズエラ(最下位)戦に勝ち、ペルーかコロンビアのどちらかは順位で抜ける。あとはチリがブラジルに負けるか、アルゼンチンがエクアドルに勝てずに終わるかすれば5位だ。(チリ負けとアルゼンチン勝てず、両方発生すればパラグアイは4位)

 「あのメッシのアルゼンチンがワールドカップに出られなければ大事件。サッカー界の損失」とする声は当然世界中で出てはいるが、そんなことは、36年ぶりの出場を目指すペルーや、予選後半にアウェイでチリ戦やコロンビア戦をくだして、ギリギリ食い下がってきたパラグアイには関係のない話だ。

 ここでまた、例のペルー人ジャーナリストのツイートを紹介しよう
「ペルーがワールドカップ行きを決めてくれれば、俺は幸せに死ねる」
 こんな言葉の前では、「有名な選手が、ヨーロッパのビッグクラブでプレーしている選手が多いチームが勝つべき、実績のある国がワールドカップに出るべき」なんてとても言えない。

 泣いても笑っても、選手のサッカー人生をかけたワールドカップ予選はあと1節。 日本時間10月11日の午前8時半に一斉キックオフだ。

ブラジルxチリ

ウルグアイxボリビア

エクアドルxアルゼンチン

パラグアイxベネズエラ

ペルーxコロンビア