ブラジルサッカー便り 

2014年よりブラジル、サンパウロ在住、サッカー大好きです。

ブラジル代表を支える中盤の要、レナト・アウグスト(29歳・北京国安)

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ブラジル代表を支える中盤、レナト・アウグスト(北京国安)(Rafael Ribeiro/ CBF)

 

 昨年9月、ロシアワールドカップ南米予選で2勝3分1敗で6位、ワールドカップ出場権獲得圏外のブラジル代表を引き継いだチッチは、その後9連勝を果たし、3試合を残しての首位通過を決めた。ネイマール、ガブリエル・ジェズース、コウチーニョらの攻撃陣に隠れ、目立たないがチームを支えるセントラルMF、29歳北京国安所属のレナト・アウグストを紹介したい。

 チッチ政権の前、ドゥンガ時代から重用されてきたレナト・アウグストは、昨年のリオ五輪の男子代表にもオーバーエイジとして出場し、金メダル獲得に貢献している。リオ出身の彼は、17歳の若さでフラメンゴでプロデビューし、2008年20歳の時にはドイツのバイヤーレヴァークーゼンに移籍した。今29歳のブラジル代表レギュラーの選手が、20歳の時にはレヴァークーゼン移籍と聞けば、その後ずっと欧州サッカーの王道を歩んできたと思われるかもしれないが、そうではなかった。4シーズン過ごしたレヴァークーゼンでは、怪我もあり、それほど輝きを放つこともなかったが、2013年にコリンチャンスに移籍してチッチと出会ったことで大きく運命が変わった。

 その年サンパウロ州選手権を制覇し、レコパ・スダメリカーナ(前年度のリベルタドーレス勝者とスダメリカーナ勝者が争う、ヨーロッパで言えば、UEFAスーパー杯)サンパウロ戦でも見事なループシュートを決め、タイトル獲得に貢献。チッチ退任の2014年はそれほどでもなかったが、2015年はその才能が爆発した。2014年を充電期間にあてたチッチの4-1-4-1システムのセンターミッドフィルダーとして、チームを牽引し、コリンチャンスを6度目のブラジル全国選手権制覇に導いた。その活躍は当時の代表監督ドゥンガの目にもとまり、代表復帰を果たした。

 しかしコリンチャンスは2014年ワールドカップスタジアム建設に多額の費用が掛かり、今ブラジルで最も負債が大きいチーム。2016年に多くの主力を失うのだが、レナト・アウグストもその時チームを去った一人だった。「シャルケからの給料3倍のオファーはまだ(チームへの愛着から)断れた。でも北京国安からの給料6倍は断れなかった。ファンのみんなごめん。俺にも生活があるんだ」の言葉は印象に残っている。

 北京国安での彼の活躍ぶりは実のところ、よく知らない。当然ブラジルでも、「中国リーグなんか行って、代表残れるのか?」との声は出ているが、チッチは中国リーグの動向もちゃんとチェックしているらしく、代表のレギュラーとして呼ばれ続けている。

 派手さはないがチッチの哲学をよく理解して、チームを勝利に導くレナト・アウグスト、このまま好調を維持して来年のワールドカップで暴れて欲しい。

 

 ※これで締めくくろうと思っていたら、昨日のエクアドル戦、「レナト・アウグストはちょっとボールに絡む回数少ないな」と思っていたら、ベンチスタートだったコウチーニョに交代させられてしまった。「ネイマール、コウチーニョ、ウィリアンは、3人同時にピッチに立つことはない。慎重なチッチは、アンカーのカゼミロを除く、4枚の中盤の真ん中には堅実なMFを2人置く」と思っていたが、「レナト・アウグストかパウリーニョを外して3人攻撃的中盤を置く」ことも選択肢の一つだということが判明してしまった。これもチッチのチーム内競争を促す手段の一つだろう。頑張れレナト・アウグスト、来年ワールドカップが終わったら、コリンチャンスに戻ってきてくれ!