ブラジルサッカー便り 

2014年よりブラジル、サンパウロ在住、サッカー大好きです。

強すぎるブラジルの悩み

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チッチ体制発足後11勝1敗、ワールドカップ予選では9連勝を飾ったブラジル代表(Lucas Figueiredo/CBF)

ブラジルが強すぎる。8月31日のワールドカップ予選でエクアドルを2-0で降し、これでチッチ体制発足後、ワールドカップ予選は9連勝となった。

ちょうど1年前の9月1日はチッチの初陣で、その時の相手もエクアドルだった。

その後ブラジルは右ウィングレギュラーのウィリアンがコウチーニョにポジションを譲った以外は、同じ顔触れでシステムも同じ、4-1-4-1。そろそろサッカーに詳しくない一般国民も、GKアリソン、DFラインは左からマルセロ、マルキーニョス、ミランダ、ダニ・アウベス、アンカーにカゼミロ、MFは左からネイマール、パウリーニョ、R・アウグスト、コウチーニョ、1トップにG・ジェズースと暗唱できるほどだ。 

 一昨日のエクアドル戦では、コンディション不良のコウチーニョのところにウィリアンが入り、1年前のエクアドル戦と全く同じ11人がスタメンに並んだ。試合はパウリーニョと、後半から投入されたコウチーニョが1点ずつ挙げて、2‐0の快勝だった。

 さて、このスタメンが来年ロシアでの本大会まで続くと、同じスタメンは1年9カ月続くことになる。こんなに長く同じチームを引っ張って、優勝できるのだろうか?例えば最大のライバルになるであろうドイツは、リオ五輪のU23世代を、今年のコンフェデ杯でも使って優勝するなど、戦力の底上げと、チームの新陳代謝を行っている。

短期決戦のワールドカップは、予選でどれほど安定した戦いが出来ていたかは全く問われず、大会期間の1カ月で瞬間最大的に強いかどうかが重要だ。同じメンバーでずっと戦い続けると、その爆発力が出にくい。今、強すぎることは悪いことではないし監督は「チーム活性化」を口実に無駄にチームをいじって弱体化させるリスクを負う必要はない。ましてやチッチは慎重派。「勝っているチームはいじるな」という有名な格言もある。

 裏を返せば、「チームをいじるのは負けた時」ともとれるが、その負けが本大会で出てしまったらそこで敗退だ。

 同じ8月31日に日本のハリルホジッチ監督が、これまでのメンバーから多くの選手を入れ替えて豪州に完勝した。ハリルホジッチ監督は豪州を徹底的に分析しそれを打ち破る手段として、新メンバーの抜擢に踏み切り、それが成功したが、ブラジルはそもそも、「敵を研究してそこを突く」といったサッカー哲学を持っていない。国内リーグでも、せいぜい下位のチームが上位相手に引き気味の試合をするくらいで、多くの試合が、両チームが普通に技を競い合い、サッカーが上手だったほうが結果として勝つ。

 しかしワールドカップは敵の方が最強ブラジルを徹底的に分析し、とっておきの作戦で挑んでくる可能性は高い。そもそも分析するためのデータは豊富だ。2016年から同じチームだし。

 残りのワールドカップ予選3試合と11月の欧州遠征で、チッチは果たして「ネイマールがいないパターン」や、別のシステム、新戦力を試したりするのだろうか?

 強すぎるゆえの悩みだが、1年9カ月同じメンバーで大会突入は危険すぎる。どこかで結果度外視してものテストは必要だ。ワールドカップは「普通に技比べをして、サッカーがお上手な方が勝つ、優勝する」大会ではないことは、ブラジルは百も承知のはず。

 次の敵地コロンビア戦では左SBマルセロと、CBミランダが出られない。いつもコロンビア戦は荒れることだし、思い切って全員控えメンバーに切り替えて、選手たちの実力を測るのはどうだろう?