ブラジルサッカー便り 

2014年よりブラジル、サンパウロ在住、サッカー大好きです。

まるでプレシーズン戦。でもれっきとした公式戦の、州選手権が始まる。

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早くも1月中旬に開幕し、5試合も消化したサンパウロ州選手権

(© Daniel Augusto Jr. / Ag. Corinthians)

 

  2018年のブラジルサッカーはとっくに開幕してしまった。昨年の全国選手権1部リーグの最終戦は12月3日。フラメンゴ(リオ州)が戦ったスダメリカーナ杯の決勝は12月13日で、グレミオ(リオ・グランデ・ド・スール州)が出場したクラブW杯の決勝は12月16日だったのに、2018年のサンパウロ州選手権、リオ州選手権、リオ・グランデ・ド・スール州は1月17日の開幕だった。

  普通欧州や日本では、前のシーズンに最後までトーナメント戦の決勝を戦ったり、次のシーズンで、リーグ戦に先駆けて大陸大会出場権を争うプレーオフに出なくてはいけない場合を除き、リーグ最終戦と次のシーズンのリーグ戦の開幕戦は、3カ月近くのインターバルがある。1カ月強は丸々休み、その後2カ月弱でトレーニングを行い開幕戦に臨む。

  それがコリンチャンスの場合は休みが1カ月、トレーニングが2週間で開幕に突入してしまった。グレミオやフラメンゴに至っては、開幕戦の日がトレーニング開始日で、当然試合には2軍やユースの選手を出さざるを得ない状況だった。

  どうしてこんな事になったのかというと、ブラジルは州ごとの大会が全国レベルの大会とは別に行われており、その分の日程も確保しなくてはいけないために、毎年日程がキツきツになってしまう上、今年はW杯イヤーで、全国選手権も中断しなくてはならず、その分の日程が1月半ばにずれ込んできてしまったからだ。

  だいたい「1月17日開幕」というが、その日は水曜だ。土日でも、もちろん祝日でもない。1月13、14日の週末に開幕したら鬼と呼ばれそうだが、1月20、21日の週末に開幕しても、日数が足りない。だから、間をとって水曜開幕にしたうえで、いきなり週2試合開催を連発して試合消化のペースを稼ごうというのだ。なんたるセコイ考え。

  州選手権はどこも「予選リーグ+決勝トーナメント」で優勝を決める。3月下旬にはFIFAマッチデーウィークがあり、欧州や日本なら、基本的に「金曜、火曜」で試合開催のFIFAウィークは週末のリーグ戦を1回休むだけで対応できるが、州選手権はその時も平気で水→日→水のペースで各州選手権の決勝トーナメント準々決勝や準決勝を行う。タイトル戦のそんな大事な時期の試合を代表抜きでやってよいものだろうか?ちなみにブラジル全国選手権は、W杯開幕の前日まで試合をして、決勝の翌日には再開される。5月最終週限りで、代表選手は代表チームに合流だ。W杯開幕までに代表選手抜きでリーグ戦が5節も進んでしまう。

  ちなみに9月、10月、11月のFIFAマッチデーウィークでも、代表選手抜きで平気で2~3節も消化してまう。ブラジル代表選手はほとんどブラジル国内でプレーしていないが、ペルー代表やウルグアイ代表、パラグアイ代表やベネズエラ代表を主力選手として抱えているチームには大きな打撃だ。

  話が脱線してしまったが、そんな雑な準備を強いられた中で、とにかく州選手権は始まってしまった。

 コリンチャンスは、開幕5試合を戦って4勝1敗。昨年のレギュラーから3人が抜けたが、左SBは補強の選手ジュニーニョ・カピシャバが前任者ギリェルメ・アラーナと遜色ない働きで、CBパブロの穴は昨年までの三番手CBペドロ・エンリケがまずまずの出来で埋めた。しかしながら大黒柱のCFジョーの穴は全く埋まらない。昨年の2番手CFだった、一応は元トルコ代表のカジムは今年も良くない。「トルコ移民の子として過酷な少年時代を英国で過ごした。気は優しいけど力持ち。たどたどしいポルトガル語も愛嬌のうち」あとはゴールさえ決めてくれれば人気爆発しそうなものだが、やはり点の取れないFWは、特にコリンチャンスのようなチームでは苦しい。Jリーグ、京都や鹿島でプレーした経験もあり、2012年のクラブW杯ではスタンドでコリンチャンスを応援していた根っからのコリンチアーノの新加入ジュニオール・ドゥトラも本職はCFではない。「チームに受け継がれているディフェンス力があり、昨年のレギュラー陣も8人残り、ジョーの穴を他の選手で埋めている」が、やはり爆発力に欠けるといった状態だ。

  サンパウロ州選手権をここまで5戦全勝と絶好調なのはパルメイラス。昨年に引き続き、今年も他のチームが羨む豪華補強で、控えにも(なんと第3GKまでも!)代表経験者がズラリのパルメイラスは、昨日のサントスFCとのクラシコも、そのサントスFCから引き抜いた、元ブラジル代表MFルーカス・リマの活躍で2-1と勝利した。もはや、パルメイラスの反則ともいってよいレベルの選手層は、解説者もライバルチームの監督も「あそこは別格だから、、」と苦笑いを浮かべるほどだ。

  「決勝トーナメントからは別物、予選リーグをぶっちぎり1位で突破しても、ギリギリの順位で突破しても、決勝トーナメントでぶつかる時は何のアドヴァンテージにも、ディスアドヴァンテージにもならない」と信じてぶつかるしかない。