ブラジルサッカー便り 

2014年よりブラジル、サンパウロ在住、サッカー大好きです。

ネイマール、花の都パリのPSGに移籍

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 PSGの本拠地、パルク・デ・プランスで行われた移籍会見でのネイマール

(C.Gavelle / PSG)

 

 ブラジル代表FWのネイマールが、とうとうスペインのFCバルセロナからフランスのパリ・サンジェルマン(PSG)に移籍してしまった。 何より話題となっているのは、2億2200万ユーロ、日本円にしておよそ290億円という移籍金の大きさだ。

 昨シーズンにポグバが、当時の最高移籍金額でユヴェントスからマンチェスター・ユナイテッドに移籍した時の移籍金が1億500万ユーロだから、軽くその倍以上だ。 

 PSGは、産油国カタールの投資会社がオーナーに就任した2011年から、パストーレ、イブラヒモビッチ、ディ・マリアなど、金に糸目をつけない補強で、一気にチームの強化をしてきた。フランスリーグを5連覇し、(直前のシーズンはモナコに優勝の座を奪われる)残る野望は誰の目にも明らか、チャンピオンズリーグの優勝しかない。

 昨シーズンの準々決勝で、FCバルセロナにホームの一回戦で4ー0と圧勝しながら、アウェイの二回戦では1-6と大敗。その試合、FCバルセロナで一番輝くプレーを見せたのがネイマールだった。 

 メッシやスアレスとスリートップを組み、同じく世界的名門のレアル・マドリードとスペイン国内、欧州の舞台で覇を競う。そんなFCバルセロナから、フランスリーグ、PSGへの移籍が「新たな挑戦」と言われてもピンとこないが、多くのブラジルのマスコミ関係者が言うような「FCバルセロナにいてはメッシの陰、そんな状態が嫌になったのだろう。PSGでお山の大将でチャンピオンズリーグに優勝できれば、FIFA世界最優秀選手賞もとれるだろうし」の見方も意地悪だろう。

 本当のところは本人にしかわからないし、報道には決して現れない内部の事情もあっただろう。今はとにかく、世界中のファンの目を楽しませる彼のプレーがPSGでもFCバルセロナの時と同じように見られることを、いや、さらに進化するように願いたい。若干25歳で、ブラジル代表通算得点記録4位の52点、77点の「ペレ超え」さえも視界に入っている超一流のサッカー選手に払われるべき敬意ってものがある。

 ただし、PSGでのネイマールには決して楽な道が待っているわけではない。PSGがフランスリーグで優勝しようと、フランスカップで優勝しようと、得点王になろうと、ベストイレブンやMVPに選ばれようと、世間に与えるはインパクトは大きくないだろう。むしろ、それらを逃した時のほうが、大きく報道されてしまうはずだ。求められているのはただ一つ、PSGのチャンピオンズリーグ初優勝だけだ。

 ここで、FCバルセロナ移籍1年目のネイマールはあまり活躍できなかったことを思い出す。どんな選手にとっても移籍してきたばかりのシーズンはある程度の困難がつきものだ。新たな国、街、文化、言葉に慣れることも必要だ。温暖なバルセロナと違い、パリは寒い。有名すぎる彼は、もはやパリの街のカフェなどで、フラッと息抜きなども不可能だろう。チームメイトにブラジル人選手が多いことは、適応の助けになるだろうが、ネイマールは情熱や喜びをプレーで表現するタイプ。移籍騒動の最中、コメントを求められたブラジル代表のチッチ監督も「ピッチの外の問題だけが心配。選手は機械ではないのだから」と語っていた。

 他の欧州主要リーグより、開幕の早いフランスリーグは、8月4日の移籍会見の当日もモナコが開幕戦を行い、PSGはこれを書いている今まさに開幕戦の最中だ。(ネイマールは移籍証明書がまだ届かず、出場は不可能)

 2017‐18シーズンは、2018年ロシアワールドカップに直結する大事なシーズン。世界の人々が、選手生活のピークのネイマールのプレーをロシアワールドカップでも楽しめるためにも、フランスでの健闘を祈る。