ブラジルサッカー便り 

2014年よりブラジル、サンパウロ在住、サッカー大好きです。

ネイマールの涙 ブラジルメディアは、日本戦よりも、ネイマールの試合後の会見に注目

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(Lucas Figueiredo/CBF) 代表通算53点目、日本戦通算8点目となるゴールを決めたネイマール。ブラジル代表歴代4位のロマーリオの記録まで、あと2点に迫った。

 

 来年のワールドカップ本番に向けての貴重なFIFAマッチデーウィーク、「11月シリーズ」で、ブラジル代表と日本代表が11月10日にフランスのリールで対戦した。

 日本にとってはこの上ない強化試合のチャンスだが、ブラジルにとっては、あまり大きな意味を持つとは思えない(失礼!)この試合、「ワールドカップ本番に向けて、対戦する可能性のあるアジアの代表との経験を積む」といった口実がせいぜいだろうか。

 試合はもう皆さんご存知の通り、3―1でブラジルが日本を寄せ付けずに勝利した。前半35分までで3ー0、2回あったPKをネイマールが1回失敗していなければ4-0の可能性もあったほどだ。南米予選で連勝街道を驀進したいわゆる(ほぼ)不動の11人から6人も入れ替えてのぞんだブラジルだったが、日本との実力差は明らかだった。

 試合内容、スコアも大きな驚きはなかったが、この日最大のサプライズは、試合後の記者会見時に起こった。 監督のチッチと共に選手側の代表として出るはずだった、この日のゲームキャプテンを務めたウィリアンではなく、ネイマールが会見に現れたのだ。

 記者の質問は9回連続でネイマールにばかり向けられ、そしてその内6回は試合のことではなく、「PSGでエメリ監督、カヴァーニとうまくいっていなのでは?」といったものばかりだった。

 ネイマールは連日のこうした報道に嫌気がさしており、「作り話をでっちあげるのはやめてくれ!俺はPSGで幸せだし、モチベーションも高く保てている。カヴァーニとも、監督とも問題はない。報道に俺は傷ついている。お願いだからくだらないつくり話をやめて、誠実になってくれ」

 ネイマールは続けて、「今日は自分の本心を伝えるために、会見に来た。俺は嘘は嫌いだ。メディアの人たちは、自分は何でも知っていると勘違いしているのではないか。実際のところ、あなたたちは何もわかっていないし、嘘を書いている。俺がこのまま黙っていたら、あなたたちの嘘が人々に本当だと思われてしまう」とまくしたてた。

 「俺だって完璧な人間じゃないさ。間違いを犯すこともある。でも自分を変えなくてはいけない。もっと人として成長しなくてはいけないと自覚している。これは人にどう思われるかという問題じゃなくて、自分がどうありたいと思っているかという問題だ」と語り続けるネイマールに、遂にチッチ監督も助け船を出した。

 チッチ監督は、「ネイマールと仕事をして1年半になるが、私もネイマールも、常に誠実に向き合ってきた。私自身も『ネイマールとチッチはうまくいっていない』のような報道を見るのにうんざりしている。誰しも完璧な人間じゃないが私は確信を持って言える。ネイマールはメディアが報ずるような、嫌な奴ではない」と擁護すると、隣で聞いていたネイマールは泣き出した。2人はインタビューの壇上で抱き合い、会見を後にした。

 ネイマールとジャーナリストたちの喧嘩は今に始まったことではなく、会見中に、「あなたはそんなに完璧な人間なのか」と言い返すこともこれまでに何度かあった。カッとなり余計なカードをもらうことも多く、派手なプライベートライフから、特に高齢のジャーナリストからは「本物のスターではない」と言われることもしばしばだ。

 ただし、ブラジルの6度目の優勝は、ネイマールの大活躍なしにはあり得ず、そのためには精神的なバランスが保たれているかどうかが重要だ。ブラジルは監督や選手の質も高く有力な優勝候補の一角であることは間違いないが、優勝のために重要なファクター、ネイマールの精神状態は、チーム関係者の努力の及ばない所に左右されてしまうのも確かだ。せめてブラジルのメディアだけは、チームの6度目の世界制覇を望むならば、ネイマールを守ってやるべきではないか?