ブラジルサッカー便り 

2014年よりブラジル、サンパウロ在住、サッカー大好きです。

またもおさわがせのネイマール、カヴァーニとのPK奪い合いはブラジルでも大不評

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カヴァーニ(左)からPKキッカーの座を奪おうとしているネイマール(中央)。

PSGは来週のチャンピオンズリーグ、バイエルン戦まで、一切の取材を禁止した。

(C.Gavelle/PSG)

 17日のフランス・リーグ PSGxリヨン戦で、物議を醸すシーンがあった。1-0とPSGリードで迎えた後半34分、PSGにPKのチャンスが与えられると、PKキッカーのカヴァーニに、ネイマールが「自分に蹴らせてくれ」とアピール、カヴァーニはこれを拒否し、自分で蹴り、失敗に終わった。

 試合はリヨンの2つのオウンゴールでPSGの勝利となったが、PKをめぐる問題が今ブラジルで大きく報じられている。

 「試合後2人がロッカールームで喧嘩した」「カヴァーニには得点王になった際の追加のボーナス契約があった」「ネイマールはカヴァーニの放出をチームに要請した」との報道もあるが、これは真実かどうかわからないので、ここでは触れない。あくまで、誰もが見ていた、ピッチ内の事実に基づいて話を進める。

 同じ試合で、この事件の前には、フリーキックのチャンスに、本来FKのキッカーも務めるカヴァーニにダニ・アウヴェスがおどけてボールを渡さず、ネイマールに渡し、ネイマールがこれを蹴り、惜しくも外れるという伏線もあった。

 ブラジルのメディアは驚くほどネイマールに批判的で、「ネイマールはまだ、PSGに入ったばかりじゃないか。カヴァーニのこれまでのPSGへの貢献に敬意を払え!」「ダニ・アウヴェスだってPSGに入ったばかりじゃないか。同じことを例えばウルグアイ人のゴディンがするか?するわけがない。嘆かわしい」「バルセロナでメッシの側にいて、彼から何を学んだんだ?彼はもっとずっと謙虚だぞ」「ネイマールは、技術だけは確かだ。しかし、彼は周囲に甘やかされている。ブラジル代表監督のチッチは電話して、勘違いしないようにたしなめたほうがいい」との論調だ。

 25歳にして、ブラジル代表通算52得点。このまま順調にキャリアを重ねていけば、王様ペレの記録を塗り替えることさえも夢ではないネイマールだが、どうもピッチの外でのチャラさや、サントスからバルセロナに、バルセロナからPSGに移籍した際の不透明なお金の問題など、意外とブラジルサッカー界にアンチも多い。

 PSGのウナイ・エメリ監督は「2人ともPKキッカーを務めるに足る実力を持っている。2人で解決して欲しい。解決できないなら私が決める」と現場の最高責任者らしからぬ弱腰で、この発言もブラジル人コメンテーターから不評だった。

 こんな事、他の選手がやったら大問題だが、何と言っても、ネイマールは移籍金290億円でPSG(実際はカタールの投資ファンド)が獲得した「ネイ様」だ。PSGはネイ様と揉めたら、カヴァーニだって、エメリ監督だって放出しかねない。

 「PSGの大将になりたいのか?いずれその時は来る。今は少しは我慢しろ。PSGに来たのは、チームをチャンピオンズリーグで優勝させるためじゃないのか?こんな問題を起こして、それがかなうと思うのか?」との解説者の怒鳴り声がTVで空しく響いていた。

 僕はブラジル代表にとっても、この「ネイ様」の気質は来年のワールドカップで思わぬアキレス腱になる気がしている。戦力的には充実しているが、ワールドカップ優勝のためには必ずどこかでチームの底力が試される正念場がやって来る。

 14年大会で優勝したドイツは決勝トーナメント一回戦でアルジェリアに大苦戦したし、10年大会のスペインはいきなり一次リーグ初戦でスイスに敗れ、窮地に追い込まれた。そんなとき、技術面だけでなく、精神的にチームを引っ張る力が果たしてネイマールにあるだろうか?ほかのポジションを見渡しても、どうもそんな精神的支柱となれる選手がいないように思えてならない。