ブラジルサッカー便り 

2014年よりブラジル、サンパウロ在住、サッカー大好きです。

絶対に何が何でも2部落ちしたくないからって、、、選手もファンもそこまでする?

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暴徒化したファンを鎮圧するため、警察が介入。ブラジルでは小さな試合でも必ず銃を持った警官が警備を行う。残留争い直接対決のような危険度の高い試合では警備の警官の数も凄い。(DENNY CESARE / CÓDIGO9 / ESTADÃO CONTEÚDO)

11月26日には今年のブラジル全国選手権、コリンチャンスのホーム最終戦を見てきた僕だが、その裏で、もう一つ気になるカードがあった。サンパウロ市から内陸に北西部に100キロほどいったカンピーナス市に本拠を置く、17位ポンチ・プレッタ(以下ポンチ)と、残留圏内16位のヴィトーリアの直接対決があったのだ。

1部残留を争うチーム同士の直接対決は、25日のブログ http://kimio-ido.hatenablog.com/entry/2017/11/25/%E3%83%96%E3%83%A9%E3%82%B8%E3%83%AB%E5%85%A8%E5%9B%BD%E9%81%B8%E6%89%8B%E6%A8%A9%E3%82%82%E6%AE%8B%E3%82%8A%EF%BC%92%E7%AF%80%E3%80%82%EF%BC%91%E9%83%A8%E6%AE%8B%E7%95%99%E3%82%92%E7%9B%AE%E6%8C%87

でもお伝えしたが、ホームを満員にしたいポンチがチケット価格を格安の6レアルに設定していた。

チームの狙い通りに満員となったスタジアムで、残留のためには勝つしかないポンチは前半開始から積極的に攻めて15分までに2-0とリードした。

しかし20分にとんでもない事が起こる。ポンチのDFロドリゴが自分のマークの相手、ヴィトーリアのFWタレーレスの背後から、臀部に手を伸ばし、お尻の割れ目に(もちろんユニフォームのショートパンツの上から、直接だったら本当にエライ事)指を這わせたのだ。(もとい、「這わせた」はソフトすぎる言い方かもしれない。「突っ込んだ」かな。)

http://globoesporte.globo.com/sp/campinas-e-regiao/futebol/brasileirao-serie-a/jogo/26-11-2017/ponte-preta-vitoria/#video-id=6315515 (問題のシーンは2分20秒くらいから)

 タレーレスが振り返って文句を言うと、ロドリゴは大げさに腕を広げて「俺何もしてねーし」と逆に威嚇するような表情を見せた。このシーンをゴールラインの側に立つ審判がしっかり見ており、主審に報告。ロドリゴはレッドカードで退場になってしまった。

 ゴールラインに立つ審判は大事なシーンを見ていないケースが多く(というかピッチに入れず、肝心なところは見難いんだろう。角度によってはゴールポストやネットも視界をさえぎるし)この日の別の試合コリチーバxサンパウロ戦でも、DFでなく、FWが相手ペナルティエリア内でハンドしたのに、PKが与えられた。それもゴールラインに立つ審判の進言によって!とにかく今回はゴールラインの審判グッジョブだった。

だいたいこのロドリゴというDF、コリンチアーノの僕からも恨みがある。ゴール前でファールを取られると、倒れているコリンチャンスの選手に「演技で倒れやがって」と凄み、FKのボールをセットしようとする選手にも激しく文句をいい、セットしようとする手からボールをたたき落とし、集中を切らそうとした。

 どうしても勝ちたい試合だからって、相手FWのお尻の割れ目に指を突っ込むなんて、もはやサッカーでもなんでもないじゃないか。そんなものまで「南米らしい闘争心」というなら、僕は容認できない。37歳の選手が所属チームを2部に落とせば、もう次のチームが見つかる可能性も低い。でも、プロにしがみつきたくてそんなことまでしなきゃいけないような選手は淘汰されなくてはいけない。実力の世界は厳しいんだ。

 その後1人少なくなったポンチは、降格圏に沈むもなぜかアウェイの成績はそれほど悪くないヴィトーリアの反撃を許し、3点叩き込まれて(その内2点は例の事件の被害者タレーレスによるもの)逆転を許した。

 後半38分に逆転ゴールを決められた直後、今度はピッチの外で事件が起こった。敗色濃厚ムードにいらだつポンチ・プレッタのファンが、柵を破壊してピッチに乱入を試みたのだ。

不穏な空気にすぐに気づいたヴィトーリアの選手も、ポンチの選手も、ロッカールームに逃げ込んだが、チーム在籍歴の長いポンチのGKアラーニャは、ピッチに留まった。 彼を取り囲んで暴徒は何を言ったか、何をしたかは定かではないが、とにかくアラーニャは怪我もなく、すぐに介入した武装警官により助け出された。
 その後も興奮収まらぬ一部のポンチのファンと警察の衝突は続き、警察は致死性のないゴム弾や催涙弾まで使って群集を蹴散らした。暴徒や群衆と言っても、もちろん全員がそんな不届き者ばかりではなく、多くの高齢者や子供連れのファンもいたのだが、こっちの警察は荒っぽい。ポンチのレプリカユニフォームを着てはいるものの、全く危なそうな様子もない一般サポーターもビシバシ警棒で殴打していたし、子供連れでオロオロするお父さんファンに、凄んだ顔を近づけて威嚇し、スタジアムから追い払っていた。
 後半38分に中断された試合はそのまま終了となり、ポンチ2-3ヴィトーリアで試合結果も成立。これで全国選手権1試合を残してのポンチの来年の2部落ちが決まってしまった。サンパウロ州の4強に次ぐ勢力として存在感を持ち、今年前半のサンパウロ州選手権(全国選手権とは別の大会)ではサントスやパルメイラスといった強豪を次々に撃破し決勝進出まで果たした好チームだったが、全国選手権が始まる前に、去年の全国選手権得点王のポッチケや、サンパウロ州選手権で存在感を見せたサイドアタッカーのクレイソンなどを引き抜かれたのが痛かった。

 ブラジルではタイトルや降格や昇格がかかると、サッカーをやっているほうも見ているほうも熱くなりすぎてしまい、こうした残念な出来事が頻発する。面白半分で見に行かなくてよかった。